【11月6日 AFP】次期米大統領に選出されたバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員に決断を迫る困難な課題、それはアフガニスタンから始まり、これまで世界各地で米国の威信を傷つける結果を招いてきた「テロとの戦い」だ。

 オバマ氏は公約として、テロとの戦いの中心軸を当初の焦点だったアフガニスタンへ戻す方針を掲げてきた。米情報機関はすでに、ブッシュ政権7年間におよぶテロとの戦いについて、戦いの支持者たちが米国同時多発テロの再発を回避してきたと自負する戦略の全容を、次期大統領としてオバマ氏にその全容を伝える準備を進めている。

■「変革」はグアンタナモ収容施設から

 オバマ氏がキーワードとする「変革」はまず、国際テロ組織「アルカイダ(Al-Qaeda)」に対するブッシュ政権の超法規的措置の象徴といえる、キューバ・グアンタナモ湾(Guantanamo Bay)のグアンタナモ米海軍基地内にあるテロ容疑者の収容施設から着手されるだろう。

 テロとの戦いの歴史には、米情報関係者らがテロ攻撃の計画を阻止してきたと自負する隠密作戦とともに、国内外の市民の拉致拘束、秘密収容所、令状なしの逮捕・裁判なしの拘留・他国への引き渡しを認める「特例拘置引き渡し」、拷問手法の使用が問題化した過酷な尋問、米国民に対する令状なしの盗聴など、数々の負の側面も刻まれてきた。

 オバマ氏は選挙戦中、グアンタナモ収容施設の閉鎖を主張した。しかし、収容者数は250人以上、しかも多くは「危険人物」とみなされる者たちである事実を勘案すると、施設の閉鎖は厄介な問題だ。

■「テロとの戦い」は使わない?

 また専門家らはオバマ氏が、ブッシュ政権のまさに「動力学的」な「テロとの戦い」から抜け出し、より大きな国際社会の協力と支援を必要とする多様な戦略へとかじを切ると見ている。

「最初にまず『テロとの戦い』という言葉が使われなくなるだろう」と、ワシントンD.C.(Washington D.C.)のシンクタンク、戦略国際研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のジェームズ・ルイス(James Lewis)氏は言う。「この言葉は誇張、言い過ぎだと思っている人は多い。実際にこれは、何も国際戦争なんかではない、別の問題だ」。

■超法規的手法、一部は前政権から継続か

 一方で、一方的な軍事使用をめったに行わなかったビル・クリントン(Bill Clinton)政権のような、法遵守を前提とするテロ対策にオバマ新政権が戻ることはないだろうというのが、多くの専門家の見方だ。

 ルイス氏は「過去に主な障害となっていたのは、対テロ作戦に正当性を付与する確かな証拠があったかどうかだ。今は法的枠組みは解決した。グアンタナモのような問題、越境攻撃も含まれるだろうが、そうした問題は本来あるべき法的な枠組みの中にいっそう戻ってくるだろうが、行動を起こすべきかどうかが問題になることはない」と指摘する。

 オバマ氏は選挙戦中に、アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者の殺害・拘束の機会があれば、パキスタン領内への攻撃を辞さないと明言している。

 米ジョージタウン大学(Georgetown University)のブルース・ホフマン(Bruce Hoffman)教授は、アルカイダやパキスタンの反政府勢力らを標的としたミサイルによる越境攻撃などは、今後も続くとの見方を示している。(c)AFP/Jim Mannion