【9月21日 AFP】(一部更新、写真追加)パキスタンの首都イスラマバード(Islamabad)中心部の高級ホテル、マリオットホテル(Marriott Hotel)で20日夜、車両による自爆テロで60人以上が死亡した事件から一夜明けた21日、現場では生存者を探して懸命の救出活動が続いている。捜査当局は国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の犯行との見方を強めている。

 この事件では、爆発物を搭載したトラックがマリオットホテルに突っ込み60人以上が死亡、約200人が負傷した。事件当時はイスラムの断食月「ラマダン」の断食が解ける夕食時で、最大の犠牲を狙って混雑する時間帯に襲ったとみられている。現場のホテル前には直径20メートル、深さ8メートルもの穴が残され、捜査当局では強力な爆発物約500キロから600キロが使用されたと推定している。

 爆発で厨房のガスに引火し、300室を擁する高級ホテルは炎上した。治安当局によれば、上の階にいた人のなかには炎から逃れるため飛び降りて死亡した人もいたという。

 21日朝になっても、火災による熱のため消防士がホテルに入って救助活動を行うことはできなかった。政府は41人の死亡を確認したが、最終的な死傷者がどれほどになるのか全くわかっていない。遺体の一部が散乱した現場周辺では、激しく損傷した遺体が火葬されていた。

 チェコ外務省の発表によると、チェコのIvo Zdarek大使の遺体も発見された。同大使は事故直後、ホテル内から救助を求める連絡を大使館に入れていたが、その後消息を絶っていた。

 事件はパキスタンのアシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)新大統領が初めて議会で演説し、テロリズム撲滅を宣言してから数時間後に起きた。また事件が発生した20日はアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン(Osama Bin Laden) 容疑者が、パキスタン国内のイスラム教徒に、米国の「テロとの戦い」に同盟するパキスタン政府に対する「ジハード(聖戦)」開始を呼び掛けた日から1年目に当たる日だった。

 事件直後、ザルダリ大統領はテロに対して厳しい姿勢で臨むと語ったが、厳重な警備体制が敷かれていたなかでこれだけの攻撃が起きたことから、武装勢力の手が首都に迫っていることは明らかだ。

 犯行声明は出ていないが捜査当局では、今年3月に東部ラホール(Lahore)で起こったパキスタン連邦捜査局(Federal Investigation AgencyFIA)に対する自爆テロ同様、アルカイダ関連組織の典型的な攻撃手法だと分析している。

 FIAへの自爆攻撃では20人が死亡したが、パキスタンのアルカイダ組織の指導者Qari Zafar容疑者が首謀したとみられている。同容疑者は、2006年3月にカラチ(Karachi)で起こった米領事館への車両自爆テロへの関与も疑われており、懸賞金500万ドル(約5億4000万円)で指名手配されている。(c)AFP