【9月10日 AFP】いまだに米当局の手を逃れている国際テロ組織「アルカイダ(Al-Qaeda)」の指導者たちは、欧米諸国に対する新たなテロ攻撃を計画している――9.11米同時多発テロから7年目を迎える今、関係当局やテロ専門家はこう指摘する。

 一時期、大幅に勢力を弱めたアルカイダだが、「旧友」タリバンの支援を受け再び力をつけ、ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者と同組織ナンバー2のアイマン・ ザワヒリ(Ayman al-Zawahiri)容疑者は、パキスタンの「安全地帯」から現在もアルカイダを統括しているというのだ。

「アルカイダは巨大な勢力を維持しているだけではない。ビデオ・メッセージで世界中の仲間と積極的にコミュニケーションをとっているし、アフガニスタンとイラクの反米闘争を支援している」とかつて元CIAのブルース・リーデル(Bruce Riedel)氏は語る。

 アルカイダは、イラクとサウジアラビアでの支配力を失ったものの、パキスタンの政情混乱とアフガニスタンのタリバン勢力再拡大により、再び活動を活発化させているという。

 戦略国際研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)のアナリスト、アンソニー・カーデスマン(Anthony Cordesman)は、過激派やテロリストの活動拠点は、今やイラクではなくパキスタンだと語る。米国の情報機関もアルカイダがパキスタンの「安全地帯」を利用して西側への攻撃を準備しているのではないかという危機感を持っている。

 米政府の情報機関当局のある専門家も、現在のパキスタンはテロリストにとって、9.11同時多発テロ以前のアフガニスタンにあったものと同様の利点があると指摘する。米国をはじめとする西側諸国を攻撃するためのテロの実行犯を多数育成し、各地に送り込んでいるというのだ。

 ジョージタウン大学(Georgetown University)のテロリズム専門家、ブルース・ホフマン(Bruce Hoffman)氏は、これまで米大統領選挙が近づくたびに、アルカイダが目立つ行動を起こしてきたと指摘する。2000年10月には米海軍駆逐艦コール(USS Cole)への攻撃が行われ、2004年にはビンラディンのメッセージ・ビデオが公開された。

「ブッシュ大統領の任期はあと4か月で終了するが、アルカイダはそれまでに何か事を起こさねばという大きなプレッシャーを受けているはずだ」と語る前述のリーデル氏は、パキスタン領内のアルカイダの安全地帯を無くさない限り、脅威は無くならないと考えている。

「特殊部隊や無人攻撃機を安全地帯に送り込んで武装勢力と戦うことはできる。運がよければビンラディン級の重要人物さえ殺害できるだろう。しかし、パキスタンが主体にならないかぎり安全地帯そのものを無くすことはできない。パキスタン側に積極的に取り組ませることが肝心だが、我々が彼らの主権を侵害して米パ関係が悪化すると、そのような協力関係を維持しにくくなる。我々にとって難しい状況だ」(リーデル氏)

 なぜこうした状況に陥ったのだろうか?多くの専門家が、米国のイラク侵攻で、アルカイダがもっとも弱体化した時期にアフガニスタンへの対応が手薄になったなったからだと指摘している。(c)AFP