【8月25日 AFP】パレスチナ人のフーダ・ガリア(Huda Ghalia)さん(14)は2年前、ピクニックに来ていたガザ市(Gaza City)の海岸で発生した砲撃事件で、家族のほとんどを失った。事件のことはまだ忘れられずにいる彼女は今、国連(UN)主催のパレスチナの子どもたちのためのサマーキャンプに心の安らぎを見いだしている。

 事件が起きたのは2006年6月9日。ピクニックに来ていた8人が死亡した。事件直後に撮影された衝撃的な写真には、血まみれの父親の遺体のそばで叫んでいるフーダさんが写っている。パレスチナ国内外の人権団体は、砲撃はイスラエル軍によるものだとしている。

 この夏、ガザの登録難民100万人に人道支援を行う国連のパレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が主催するサマーキャンプでは、すらりと背も伸びたフーダさんが8-15歳の子どもたち20人ほどのグループを率いて遊んだり笑っている姿を見ることができる。そんなフーダさんの姿は、紛争の巻き添えになったほかの子どもたちに希望を与えている。

「お花の絵を描いたり、子どもたちと遊んだりするのが好き。戦車や飛行機は嫌いよ」(フーダさん)

 ガザ地区(Gaza Strip)では、6月19日に停戦合意が発効して以降、銃撃戦はおおむね収まった。しかし長年にわたるイスラエル軍とパレスチナ武装勢力の交戦で、住民の多くは肉体的にも精神的にも傷ついている。

 そのような状況で、UNRWA主催のさまざまなサマーキャンプに癒しを見つける子どもたちは少なくない。UNRWAは毎夏、世界各地の貧困地区で約20万人の子どもを対象にキャンプを開くが、うち3万人はガザの子どもたちだ。

 UNRWAのアドナン・アブ・ハスナ(Adnan Abu Hasna)広報官によれば、サマーキャンプでは「パレスチナの子どもたちが抱えているストレスを軽減するため、教育的活動とレクリエーション活動の両方を行っている。そのほか、失業者に非常勤の仕事を提供したりもしている」。

 ガザ地区を実効支配するイスラム教原理主義組織ハマス(Hamas)など武装組織が主催するサマーキャンプではイデオロギー教育や、時には軍事訓練が施されるが、UNRWAは「政治からは距離を置こうとしている。子どもたちが暴力の結果に向き合うことを支援するのが目的だ」(同広報官)。

 国連統計によれば、ガザ地区の住民150万人のうち18歳以下の占める割合は56%。今年に入ってからイスラエルとの紛争で犠牲になった未成年は、69人に上る。数週間のサマーキャンプは、そうした子どもたちが恐怖と向き合う一助になっている。だが、パレスチナ紛争の傷はそう簡単には癒えない。(c)AFP/Adel Zaanoun