【6月12日 AFP】アフガニスタン駐留米軍は12日、米軍主導の多国籍軍がパキスタンの軍事拠点を不当に攻撃しパキスタン兵11人が死亡したとのパキスタン政府の非難を受け、ビデオ映像を公開し空爆は武装勢力を狙った正当なものだったと主張した。

 パキスタン政府は、多国籍軍が11日未明パキスタン領内の部族地帯にある軍事拠点に一方的に「卑劣な」攻撃を加えたと米国を批判。ブッシュ政権が「テロとの戦い」の同盟国とみなすパキスタンと米国との間に緊張が走った。

 これを受け、駐留米軍はパキスタン兵に犠牲が出たことに「遺憾の意」を示したうえで、11日の空爆は武装勢力を対象とした正当なもので、パキスタン側にも事前通告も行ったと主張し、攻撃はアフガニスタン東部の駐留軍に攻撃を加えパキスタン領内に逃げ込んだ武装勢力グループ7人を狙った「精密な」空爆だったと説明した。

 さらに、駐留米軍は主張を裏付けるビデオ映像を公開した。無人偵察機が撮影したという映像には、岩陰に潜んでいる数人に最初の攻撃が加えられ、続いて谷間に逃げ込む男たちを狙って3度の攻撃が加えられる様子が映っている。また、背景には「攻撃対象地域に、(パキスタン)軍部隊や基地の存在がないのは明らかだ」と語る声が流れる。

 今回の攻撃は、アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)や国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系武装勢力との戦いでパキスタン政府が米国と協力する姿勢を示した2001年以来、両国間におけるこの種の事件として最悪のものになった。

 元米中央情報局(CIA)職員で、3人の米大統領に南アジア問題について助言してきたブルッキングス研究所(Brookings Institution)のシニアアナリスト、ブルース・リーデル(Bruce Riedel)氏は、AFPに対し「最悪のタイミングで起こった」と語る。「これにより、アルカイダ勢力に対するパキスタンの圧力がさらに弱まる恐れがある」(c)AFP