【12月29日 AFP】ベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相が暗殺されたパキスタン情勢が不安定化するなか同国の保有する核兵器がイスラム武装勢力の手に渡るのではないかとの懸念が出ていることについて、米国の専門家は28日、その危険性はきわめて低いという見方を示した。

 11月にペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領が非常事態を宣言して以来、パキスタンが保有する推計50発の核弾頭の警備状態に世界的に注目されていたが、27日にブット元首相の暗殺を受け改めて懸念が高まった。

 米シンクタンクの複数の専門家は、パキスタン軍の核兵器管理はしっかりしており、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)やアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban )などの武装勢力が核弾頭やミサイルを入手する恐れは非常に低いと考えている。

 米カリフォルニア(California)州のモンテレー国際研究所(Monterey Institute of International Studies)ジェームズ・マーティン核不拡散研究センター(James Martin Center for Non-Proliferation Studies)のレナード・スペクター(Leonard Spector)副所長は、核兵器が武装勢力の手に渡る危険は非常に少ないだろうと語る。
 
 「現在、軍の統率と結束は維持されており、この状況は続くだろう。実際に核兵器保管場所を警備する中核組織はきわめてよく統率されている。この5年ほどは、それ以前よりもよく訓練されており、イスラム主義的傾向のある人物は担当から外されている」(スペクター副所長)

 スペクター氏は、仮にパキスタン情勢が混乱の度を深め、政府の統治能力が失われたとしても軍の指揮系統は乱れないだろうとしている。(c)AFP/James Hossack