【9月28日 AFP】キューバ政府は27日、スポーツ選手が国外で獲得した賞金のほとんどを選手自身が保有できることを認めたと発表し、亡命を考える人が同国に留まるよう奨励する方針に転換した。

 これまでキューバのスポーツ選手は、海外で獲得した賞金の15%しか保有することを許されていなかったが、政府は共産党機関紙で、2014年から賞金の80%を選手が保有できると発表した。

 今回の方針転換は、五輪でメダルを狙える有力選手が自国に不満を抱き、より多くの収入を得られる国に相次いで亡命したことで近年いくつかの競技で輝きを失ったことを受け、キューバ国内で施行されたアスリートの報酬に影響するいくつかの政策変更のうちの一つだ。

 今回の変更を受け、キューバのアスリートはより競争が激しく、報酬の高い国外クラブと契約を交わすことが可能となった。それは、世界でもトップレベルを誇るキューバの野球選手が海外のプロリーグでプレーし、高い報酬を手にできる機会が与えられたことになる。

 また今回の方針転換は、カリブ海の共産主義国の理想とは相いれない、国外のクラブが条件を競って選手と契約したり、国外の大会で賞金を獲得することなどを禁じてきたポリシーを突然破棄することを意味している。

 政府は機関紙で、収入に対する新しい規制は一週間ほど前にキューバの国家評議会で承認されたと発表している。

 共産党機関紙のグランマは、世界基準では際立って低いレベルにあるスポーツ選手の収入が増大することで、キューバはスポーツの分野で再び競争力を高められると見込んでいると伝えた。

 今回発表された変更には、すべての選手の給与をわずかずつ増大すること、際立った成績を残した選手にはボーナスが支払われることなどが含まれている。コーチとトレーナーも、収入増加の恩恵を受ける。

 グランマは、スポーツの分野を強化することでキューバ政府は国家の収益の源泉を作り出し、競争の質と激しさを向上させ、成果に応じて選手の収入が増加していくことを望んでいると伝えている。

■相次ぐ有力選手の亡命により国際舞台で結果を残せず

 陸上競技からボクシングに至るまで、その高い運動能力はキューバが誇る革命の成果だとされてきた。人口がわずか1100万人の島国は、ラテンアメリカのスポーツ強豪国だった。

 しかし近年、共産主義の島は国際スポーツの舞台でかつてほどの活躍を見せることができなくなっていた。その理由のひとつには、ほかの国々に比べて、選手の努力の結果に対する報酬が極端に低いことが挙げられている。

 アスリートに対する低い報酬は、国内で優れた才能を持った選手や、前途有望な若手選手が亡命する最大の理由となっていた。

 政府の新しいガイドラインでは、アスリートに対する毎月の最低所得保証と、活躍と実績に応じて「6段階のカテゴリー」が設定された。

 たとえば、五輪のメダリストは月額1500ペソ(公表レート換算で約6100円)、世界大会の優勝者は1300ペソ(約5300円)を手にすることができる。

 また、北米大陸で行われた大会の金メダリストになれば1200ペソ(約4900円)、中米の大会で優勝者すれば1100ペソ(約4500円)が与えられる。

 新たな報酬システムのほとんどは2014年に施行されるが、今年11月に開催される野球の全国大会では先行して月額給与と特別報酬が支払われるとしている。(c)AFP