【6月11日 AFP】エンターテインメント集団「シルク・ドゥ・ソレイユ(Cirque du Soleil)」の本部があるカナダのケベック(Quebec)州で、高さ5メートルの壁とトランポリンの間を、まるで重力などないかのように行き来する人たちがいる。

 彼らが楽しんでいるのは、まだ誕生して間もないスポーツ、「ウォール・トランポリン」だ。

 近代サーカスのアクロバットに端を発するこのスポーツの原型は、屋根の上など都市の建物の合間を走ったりよじ登ったり、できるだけ速く動き回る「パルクール(Parkour)」と呼ばれるスポーツで、これにトランポリンを加えたのが、ウォール・トランポリンだ。

 アクロバットのプロでウォール・トランポリンに転向したジュリアン・ロベルジュさん(23)は「普通のトランポリンは堅苦しすぎ。壁が加われば、可能性は4倍に膨らむ」と説明する。ロベルジュさんと仲間たちはすでに10メートル近くをジャンプすることができるという。滞空時間が長いため、3回ひねりなどの複雑な動きを取り入れることもできるようだ。

■正式な授業科目にも

 ウォール・トランポリンが生まれたのは1980年代の同州モントリオール(Montreal)だが、当時はそれほど流行らなかった。ところが最近になってインターネット上にビデオが投稿されると、動画は話題になり、ウォール・トランポリンに注目が集まった。シルク・ドゥ・ソレイユの他にも、ケベック州を拠点とする団体は複数ある。

 サーカス団「シルク・エロワーズ(Cirque Eloize)」の団長ヤノット・パンショーさんは「モントリオールの国立サーカス学校で生徒だった時、友達とトランポリンの横にマットレスを積み上げて、壁とトランポリンの間を飛び跳ねていた。確かなことは言えないけれど、僕たちがこのスポーツのパイオニアじゃないだろうか」と話す。

 約10年後、シルク・ドゥ・ソレイユによってウォール・トランポリンは知られるようになった。エンターテインメント業界からの要望で、3年前にはモントリオールのサーカス学校で正式に授業科目として採用もされた。競技参加者の正確な数は分からないが、カナダ全体で30人くらいだろうとロベルジュさんは語る。

■エックスゲームズにも打診

 インターネットのおかげで広まったものの、ロベルジュさんはもっと世界的な注目が集まることを願っている。その試みのひとつとして、BMXレースやスケートボード、ローラーブレードなどアクロバティックなスポーツが集まる競技大会「エックスゲームズ(X Games)」に種目として加えてもらえるよう打診しているという。

 この秋には、カナダ中のウォール・トランポリンの達人が一堂に会するイベントが計画されており、これが来年のエックスゲームズで正式種目になる足がかりとなることを関係者は期待している。(c)AFP/Laurent Vu The