【11月29日 AFP】ヘルメットにマウスガード、それに膝当てを装着して、シドニー・アサシンズ(Sydney Assassins)のメンバーたちは、ブロックや体当たりの厳しい練習をする。それはバレエのようでありながら、同時に荒々しくもある。

 チームの団結力は強いが、ローラーダービーは、いわゆる普通のスポーツとは違う――バンパーカーとスピードスケートの中間にあるような、女性専用の競技だ。

 ルールは単純。5人ひとチームでローラースケートでコースを走り、両チームに1人ずついる「ジャマー」が集団の最後尾から最前列まで駆け上がろうとするゲームだ。味方ジャマーが相手チーム選手を1人抜くたびに、ポイントが入る。

 ジャマー以外の選手は「ブロッカー」と呼ばれ、相手チームのジャマーが追い越そうとするのを阻止し、自チームのジャマーを逆に守る役割だ。この戦いは、かわいらしいものとは言えない。

「ローラーダービーの選手になる女の子たちはけがをすることもいとわない。控えのベンチに座っていたい女の子には不向きなスポーツよ」と、アサシンズの中心選手、ヘータレード(Haterade)は語る。

「そこが人気の理由ね。2011年の女性は本当に自立してたし、女性が好戦的になることやフルコンタクトスポーツをやることは何も間違ってないから」(ヘータレード)

 他の選手たちと同様に、ヘータレードもスケート名で呼ばれている。選手のニックネームはたいていがおふざけの入ったもので、言葉遊びや風刺になっている。

 たくみな体当たりで選手の1人が吹っ飛び、顔から木の床に音をたてて突っ込んだ。氷が差し出され、倒された選手は放心状態でしばらくその場にしゃがみこんでいた。

 選手たちはいつも傷だらけだと、2007年にシドニーでローラーダービーを創設した元選手の1人、タイダルウエーブ(Thigh-dal Wave)は語る。尾骨骨折で現役を引退し、今はコーチをしている。

「名誉の負傷よ」と語るのは選手のアポロニア・サンダープッシー(Apollonia Thunderpussy)。「作った傷を写真で撮影して友だちにメールで送る唯一のスポーツかもしれないね」

■ワールドカップ初開催へ

 ローラーダービーは1920年代に米国で始まった競技だが、近年、オーストラリアで爆発的に広まった。過去4年間で100近いリーグが設立された。

 サブカルチャーに過ぎないとはいえ、選手たちは本気だ。それには理由がある――ローラーダービー・ワールドカップ(Roller Derby World Cup)が今度、初めて開催されるのだ。

 この10年で世界中で「爆発的に」人気が出たというヘータレードの説明を裏付けるように、大会には世界13か国のチームが参加する。ヘータレードは、オーストラリア代表として、12月第1週にカナダ・トロント(Toronto)で戦う。

「女性として2つの目標がある。1つは米国と対戦すること。彼女たちはとてつもない。私たちはいつも彼女たちに注目し、彼女たちから多くを学んでいる」

「それと、どうしてもキウイを倒したい」とヘータレードは、好敵手のニュージーランドについて語った。(c)AFP/Amy Coopes