【12月21日 AFP】潜水器具を用いずに息を止めて海中に潜るフリーダイビングの前世界記録保持者サラ・キャンベル(Sara Campbell、37)が2010年、水深100メートルの壁を破り、世界新を奪還しようと意気込んでいる。

 注意を怠れば鼓膜が破れる危険も抱え、肺がレモン大になってしまうほどの水圧に対処しながら、数十メートルの深さまで潜水するフリーダイビング。

 キャンベルは「毎回のダイブが身体的、精神的な挑戦。身を潜めていく間に、心臓が鼓動する回数が減り、血液が体の中心部に集まり、自分の体が大きく変化するのを体験する」と言う。「10メートル潜るごとに、水圧は倍に増える、つまり肺の大きさが半分になるということ。深さ100メートル近くなれば、いつもの肺の10分の1の大きさしかないということです」

 キャンベルはまったくのビギナーから始めて数か月で、フリーダイビング世界記録を達成した。そして今年、バハマ諸島で12月初旬に行われた世界選手権では「なんなく」92メートルを潜り、銀メダルを獲得した。

 そのキャンベルの2010年の目標は、100メートルの壁を打ち破り、ライバルのロシアのナタリア・モルチャノワ(Natalia Molchanova)に塗り替えられた世界記録を奪還することだ。

 英国人のキャンベルは4年前、あくせくしたロンドンから離れ、紅海沿岸のエジプトのリゾート地、ダハブ(Dahab)に移り住んで以来、ヨガを教えて生活している。ヨガの呼吸法が非常にうまいキャンベルを見て、生徒が勧めたのがフリーダイビングだ。

 ただし、目標を追いかけることから逃れたくて英国を離れたキャンベルは約1年間、フリーダイビングに手をつけなかった。2006年4月になって始めたが、6週間後には、A型肝炎でドクターストップがかかった。本格的にトレーニングを始めたのが、さらに1年後の2007年4月。そこから半年後の10月、2日間のうちにフリーダイビングの3つの違う種目で世界新を打ち立て、選手権の金メダルを獲得した。

 これまでの個人最高記録は、2009年4月に達成した深さ96メートル(潜水時間3分36秒)だ。実は過去2回、100メートルまで到達しているのだが、水面に戻る際に残りわずか数メートルというところで2回とも失神し、記録が認められなかった。

 一方、ライバルのモルチャノワは9月、101メートルの世界新を達成した。この2人以外に水深100メートルの境地で競える者は現在いない。

 キャンベルは人間の限界を押し広げていくところに、たまらない魅力を感じているという。

   「つい最近まで、医学的に水深50メートル以下までフリーダイブするのは不可能といわれていた。やってみるまではできるかどうかって思うけれど、潜っていると限界の扉が開き、もう少し遠くまで行けると思える。人間の限界は心の持ちようで、無限にも広がっていくのです」

(c)AFP/Robin Millard

【参考】キャンベルさんが潜る映像はこちらから(Youtube/AFPBBチャンネル)