【7月15日 AFP】陸上、男子短距離のタイソン・ゲイ(Tyson Gay、米国)とアサファ・パウエル(Asafa Powell、ジャマイカ)がドーピング検査で陽性を示したことが14日、明らかになった。

 世界歴代4位までのタイムを持つ選手のうち2人がドーピング検査で陽性となり、花形競技である100メートルの世界に衝撃が走った。

 2007年の第11回世界陸上大阪大会(11th IAAF World Championships in Athletics Osaka)で優勝し、今季の世界最速タイムを記録している30歳のゲイは、禁止薬物の陽性反応が出たことを受け、すぐさま8月に迫った第14回世界陸上モスクワ大会(14th IAAF World Championships in Athletics Moscow)の欠場を表明した。

 また元世界記録保持者であるパウエルも、モスクワ大会へ向けた国内の選考レースで、禁止されている興奮剤の陽性反応が出たことを認めた。しかし30歳のパウエルは、故意に違反を犯したわけではないと強く主張している。

 ゲイは、ジャマイカのヨハン・ブレイク(Yohan Blake)と並ぶ9秒69の自己記録を持っており、これは世界記録保持者のウサイン・ボルト(Usain Bolt)の9秒58に次ぐ世界歴代2位タイの記録となっている。パウエルは、歴代4位となる9秒72の記録を持っている。

 ゲイは12日、米国反ドーピング機関(United States Anti-Doping AgencyUSADA)から検査で陽性となったと知らされた。14日に入り、全米陸上競技連盟(USA Track and FieldUSATF)がゲイの世界選手権出場辞退を発表している。

 同日、USADAはゲイについて、Bサンプルの検査がまだ行われていないため、現時点では違反の有無は確定していないとしている。USATFは、今後も引き続きUSADAにに協力し、陸上界から薬物を撲滅することを目指すとしている。

 ゲイは米メディアに対し、自身に過失があったことを認めつつ、何者かによっておとしめられたと語った。

 ゲイは、世界陸上の選考会を兼ねる5月の全米陸上選手権(USA Outdoor Track & Field Championships)で、今季世界最高となる9秒75で優勝を果たしていた。これは世界歴代10番手のタイムとなる。

 世界記録保持者であるボルトの今季の自己ベストは、6月にジャマイカのキングストン(Kingston)で記録した9秒94となっている。

 ゲイは2007年の世界陸上で男子100メートル、200メートル、4×100メートルリレーで金メダルを獲得して3冠を達成し、2012年のロンドン五輪では、4×100メートルリレーで銀メダルを獲得している。

■パウエル陽性反応認める、ジャマイカではその他4選手が陽性

 一方、30歳のパウエルは自身のツイッター(Twitter)のアカウントで、検査で陽性反応が出たことを認めた。

「6月の選考会で提出したサンプルから『不都合な結果』が出たことを認める。検出されたオキシロフリンは、禁止興奮剤とみなされているものだ」

「はっきりさせておきたいのは、意図的に、それと知ってルール違反にあたるサプリメントや物質を摂取したわけではないということだ。これまでも今も、誰かを欺こうとしたことはない」

 2005年6月から2008年5月まで100メートルの世界記録を保持していたパウエルは、世界陸上では2007年の大阪大会と2009年のベルリン大会(12th IAAF World Championships in Athletics Berlin)の同種目で銅メダルを獲得し、ベルリン大会では4×100メートルリレーで金メダルに輝いた。

 しかし五輪では個人種目のメダルに縁がなく、2004年のアテネ五輪と2008年の北京五輪では5位、2012年のロンドン五輪では足を痛めて決勝を8位で終えた。

 報道によると、ジャマイカで6月に行われた選考レースでは、パウエルを含めて5人の選手が陽性反応を示したという。

 その1人として、英デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)紙は、北京五輪の女子100メートルで銀メダルを獲得したシェローン・シンプソン(Sherone Simpson)の名を報じている。

 また14日遅くには、パウエルの代理人を務めるタラ・プレイフェア=スコット(Tara Playfair-Scott)氏が自身のツイッターアカウントで、サプリメントを与えたとされる人物がイタリアで拘束されていることを明かした。

「彼はこの件に関連して、イタリアの司法当局に拘束されている。調査は今も続いている」

(c)AFP