【12月22日 AFP】2009年の陸上競技は、8月に開催された第12回世界陸上ベルリン大会(12th IAAF World Championships in Athletics Berlin、以下ベルリン大会)で男子100メートルと200メートルの世界記録を塗り替え、4×100メートルリレーを含む3冠を達成したジャマイカのウサイン・ボルト(Usain Bolt)が、再び話題の中心となった。

 2008年北京五輪の同3種目で世界記録を更新し3冠を達成していたボルトは、ベルリン(Berlin)でも期待に応えて主役を演じた。派手で陽気な21歳は、ベルリン大会の100メートルで9秒58、200メートルで19秒19を記録し、ともに自らの世界記録を打ち破ると、4×100メートルリレーでは母国ジャマイカを優勝に導いて再び3冠を達成し、陸上競技界にずっと必要とされていた新風を吹き込んだ。

 国際陸上競技連盟(International Association of Athletics Federations、以下IAAF)のラミーネ・ディアック(Lamine Diack)会長は、ボルトについて「陸上競技界のみならず、世界で最も有名なスポーツ選手かもしれない」と語っている。

■セメンヤの性別疑惑が浮上し、イシンバエワが記録なしに終わった世界陸上

 201の国と地域から1984選手が参加したベルリン大会では、ボルトの活躍が目立ったものの、金10個、銀6個、銅6個で計22個を獲得した米国がメダルランキングで1位を獲得した。2位には金7、銀4、銅2で計13個のジャマイカ、3位には金4、銀5、銅2で計11個のケニア、4位には金4、銀3、銅6で計13個のロシアと続いた(純粋な獲得数ではなく、上位メダルの獲得数が多い国が上位に入る)。

 ボルト個人の短距離2冠に対し、男子長距離ではエチオピアのケネニサ・ベケレ(Kenenisa Bekele)が5000メートルと1万メートルで北京五輪に続き2冠を達成し、これまでで世界最強の長距離ランナーであるという名声をさらに確固たるものとした。ベケレは世界陸上の1万メートルで4連覇を達成し、同じエチオピア出身のハイレ・ゲブレセラシェ(Haile Gebrselassie)の記録に並んでいる。

 ベルリン大会で話題の的となったのは、女子800メートルで金メダルを獲得した南アフリカ出身の18歳、キャスター・セメンヤ(Caster Semenya)だった。セメンヤの持つ加速のスピードにより性別に関する疑惑が浮上すると、セメンヤが両性具有であったという検査結果が漏れたため、南アフリカ国民と政府の反感を買った。その後、セメンヤの金メダル保持が確定し、性別検査の結果は公表されないことになった。

 ロシアのエレーナ・イシンバエワ(Yelena Isinbayeva)が女子棒高跳びで3連覇を逃したことは、おそらくベルリン大会で最も衝撃的な出来事だった。大会開幕前に競技会で6年ぶりの敗戦を喫していたイシンバエワは、ベルリンでは記録なしという驚きの結果に終わった。

 しかし、イシンバエワは閉幕後に行われたゴールデン・リーグ2009(AF Golden League 2009)第5戦チューリヒ大会(Weltklasse Zurich)で5メートル06を記録し、自身が北京五輪で記録した世界記録を更新している。

■薬物違反のマリオン・ジョーンズから剥奪された金メダルは空位に

 陸上界に再び持ち上がったドーピング問題では、北京五輪の男子1500メートルで金メダルを獲得したモロッコ生まれでバーレーン国籍のラシド・ラムジ(Rashid Ramzi)に最も注目が集まった。ラムジは持続性エリスロポエチン受容体活性化剤(Continuous Erythropoiesis Receptor ActivatorCERA)と呼ばれる新世代のエリスロポエチン(ErythropoietinEPO)で陽性反応が検出され、メダルを剥奪されている。

 また、国際オリンピック委員会(International Olympic Committee、以下IOC)は、薬物違反を犯したマリオン・ジョーンズ(Marion Jones)から2007年に剥奪した2000年シドニー五輪女子100メートルの金メダルの再分配を行わないことを決定した。従来ならば、同レースで2位に入ったギリシャのエカテリニ・タヌー(Ekaterini Thanou)が金メダルに繰り上がることになるが、IOCは2000年以降ドーピング疑惑の渦中にあったタヌーの繰り上げを嫌い、シドニー五輪の女子100メートルは空位となり、銀メダルが2人となった。

■ダイヤモンドリーグが新設される2010年シーズン

 ボルトが短距離王者に戴冠した同時期に、IAAFは全6戦で行われていたゴールデン・リーグとグランプリ大会に代わり、14戦で行われるダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League)の新設を発表している。

 これは代理人の意向でゴールデンリーグの出場を最低限に抑えていたボルトが、ライバル選手と直接対決することを意味する。例を挙げるならば、これまでにボルトは、第11回世界陸上大阪大会(11th IAAF World Championships in Athletics Osaka)で短距離3冠を達成するも、ベルリン大会では銀メダルに終わった米国のタイソン・ゲイ(Tyson Gay)と今シーズンのゴールデンリーグでは対戦していない。

 しかしながらIAAFは、世界選手権や五輪などの特別な大会における特異性を保持するため、直接対決を過剰に許可しないとしている。

 ダイヤモンドリーグでは、全シリーズを通してゴールデンリーグの10種目から32種目に競技種目数を増加することになっている。(c)AFP/Luke Phillips