【11月12日 AFP】現地時間11日にラツィオ(SS Lazio)のサポーターが警官の誤射により死亡するという事件が発生し、イタリア全土のサッカーファンに重大な波紋を呼ぶ事態となったことを受け、イタリアサッカー関係者は12日、緊急会議を行うことを決めた。

 イタリアではサポーターの死亡事故によって警察をターゲットにした暴動が各地で起こり、11日に開催が予定されていたセリエA・第12節の3試合が中止または延期となった。ANSA通信は、これらの暴動によって少なくとも40人の警官が負傷し、その内1人は鉄の棒で殴られ重傷を負ったと報じている。

 現地時間11日、トスカーナ地方アレッツォの高速道路のサービスステーションで遭遇したラツィオのサポーターとユベントス(Juventus)のサポーターが衝突し、鎮圧に動いた警官の拳銃の誤射によりラツィオの男性サポーターが1人死亡するという事件が起きた。

 死亡した男性は検死の結果、26歳のガブリエレ・サンドリ(Gabriele Sandri)さんと分かった。サンドリさんは同日行われる予定だったラツィオvsインテル(Inter Milan)戦を観戦するためにサポーター仲間数人と車でミラノに向かう途中、車の中に座っていたところを警官に首を撃たれ死亡した。

 「悲劇的な過失」として遺憾の意を表明したアレッツォ警察当局は「サポーター同士の諍いとは認識していなかったが、重大な結末に至ることのないように警察は2つのグループの小競り合いを止めるために介入した」と語っている。

 事件を受けてイタリアサッカー連盟(Italian Football Federation:FIGC)は、インテルvsラツィオ戦の延期を発表したが、試合の開催を予定されていたミラノでは約400人のサポーターが警察署に石を投げ入れたほか、サン・シーロ・スタジアム(San Siro Stadium)の外や国営放送のイタリア放送協会(RAI)前では反警察のスローガンを繰り返し叫び抗議するサポーターの姿が見られた。

 また、イタリア北部のベルガモで行われたアタランタ(Atalanta)vsACミラン(AC Milan)戦では、アタランタの熱狂的なサポーター(ウルトラス)が試合前に警察と衝突した後、試合開始7分後に観客席とピッチを隔てるガラス板の2ヵ所を破壊。アタランタ選手が説得を試みるも事態は収拾されず、試合は中止に追い込まれた。

 これらの事態を受け、以前から危険視されていた同日夜のASローマ(AS Roma)vsカリアリ(Cagliari)戦もイタリアサッカー連盟の判断により延期とされた。しかしながら試合が予定されていたローマの本拠地スタディオ・オリンピコ(Olympic stadium)周辺では数百人のサポーターが暴徒化し、バスや車に火を放つほか、マスク姿で手に棒を持ったサポーターが警察宿舎を襲撃するという暴動が発生。群集の一部はイタリア五輪委員会(Italian Olympic Committee:CONI)の本部に侵入しオフィスを荒らし回った。

 この事件で警察は催涙ガスを放つなどして事態の収拾をはかり、女性1人含む3人を逮捕したと発表している。  シエナで開催されたシエナ(AC Siena)vsリボルノ(Livorno)の試合前には、警察官や警備員に対し「殺人者」と言い放つサポーターが見られたが、この光景はイタリア全土のスタジアムで散見されている。

 2007年2月2日のカターニア(Catania)vsパレルモ(US Citta di Palermo)戦の暴動で警察官1人が死亡してからの約9か月間、イタリア政府は4月に新たな法律を導入したほか、国内スポーツのセキュリティーを監視する団体「The National Observer for Sporting Events」を新たに設立するなどフーリガンやスタジアムでの暴力行為の撲滅を目指してきたが、この事件によって派生したこれらの事態は同政府と同団体これまでの活動の成果に大きな影を落とした。(c)AFP/Gregorie Lemarchand