【11月12日 AFP】(一部更新)現地11日にラツィオ(SS Lazio)のサポーターが銃で撃たれて死亡した事件を受け、イタリアは国中で大騒動となりセリエAの数試合が中止に追い込まれるなど、同国サッカー界は再び暴力の暗い影に覆われている。

 亡くなった26歳のガブリエレ・サンドリ(Gabriele Sandri)さんは、11日に行われる予定だったインテル(Inter Milan)戦を観戦するためにサポーター数名と車でミラノに向かう途中に、イタリア中部トスカーナ地方アレッツォの高速道路のサービスステーションでユベントス(Juventus)のサポーターと遭遇。騒ぎとなり警察が介入した際、当局の表現では「悲劇的な過失」によりサンドリさんは車の中で座っていたところを警察に首を撃たれて死亡した。

 2006-07シーズンに暴動により警官が死亡するなど暴力事件が多発したことを受け、イタリア政府は暴力行為の撲滅を目指し国内スポーツのセキュリティーを監視する団体「The National Observer for Sporting Events」を新たに設立。同団体は暴力行為が70%減少したと主張していたが、サンドリさんの事件によりその成果は大きな打撃を受けることになった。

 なお、アレッツォ警察のVincenzo Giacobbe氏は、「サポーター同士の諍いとは認識していなかったが、重大な結末に至ることのないように警察は2つのグループの小競り合いを止めるために介入した」と語っている。

 イタリアサッカー連盟(Italian Football Federation:FICG)は、ラツィオとインテルの試合の延期を決定し、また11日に開催が予定されていた7試合については事件を考慮し、試合開始を10分間遅らせ選手や審判は喪章を付けることとなった。しかし、漂う雰囲気は張り詰めたものとなり、いくつかの試合の前には衝突が起きた。

ANSA通信は、ASローマ(AS Roma)とカリアリ(Cagliari)の対戦が予定されていたローマのスタディオ・オリンピコ(Olympic stadium)の周辺で衝突が起こり、3人と警官6人が負傷(警官の内1人は重傷)したと報じている。この衝突では、数百人のサポーターがマスク姿で手には棒を持ち、警官に襲い掛かりバスや数台の車に火を放った。さらに群集はイタリア五輪委員会(Italian Olympic Committee:CONI)の本部侵入に成功しオフィスを荒らした。これに対し警察は催涙ガスを放つなどして事態の収拾に乗り出し、女性を1人含む3人が逮捕された。

 またイタリア北部のベルガモでは、アタランタ(Atalanta)の「ウルトラス(熱狂的なサポーター)」が、ホームでのACミラン(AC Milan)戦の前に警官と衝突し、試合開始7分後には観客席とピッチを隔てるガラス盤を2か所を破壊したため試合は中断された。アタランタの選手が説得を試みるも事態は収拾がつかず、主審が選手をピッチから引き揚げさせ、その後試合の中止が決定した。

 ミラノでは約400人ものサポーターが警察署に石を投げ入れ、サン・シーロ・スタジアム(San Siro Stadium)の外ではラツィオとインテルのサポーターが反警察のスローガンを繰り返し叫ぶ姿が見られた。さらにシエナ(Siena)とリボルノ(Livorno)の試合前には、警察官や警備員に「殺人者」と言い放つサポーターが見られたが、この光景はイタリア全土のスタジアムで散見された。(c)AFP/Gregorie Lemarchand