【カターニア/イタリア 3日 AFP】サッカー、イタリア・セリエA・第22節、カターニア(Catania)vsパレルモ(US Citta di Palermo)の試合で暴動が起こり警察官であるフィリッポ・ラチティ(Filippo Raciti)さんが死亡する事件が起きた。

 暴動は試合中と試合後に起こり38歳の警官が死亡しまた1人が重症を負ったと伝えられている。死亡した警官は、観客が投げ入れた手製の爆弾が顔に当たったものとみられており、運ばれたガリバルディ病院(Garibaldi Hospital)で死亡が確認された。また、暴動により多数の観客が負傷し、カターニアサポーターから14人の逮捕者が出る事態となった。

 さらに同じイタリア国内で、1月27日にはカラブリア州のアマチュアチームであるSammartineseErmanno Licursiディレクターが、ライバルチームであるカンチェレーゼ(Cancellese)のサポーターに顔を踏まれ、脳内出血により死亡する事件が起きていたことも明らかになった。

■イタリア社会全体に責任があるとするスポーツ紙

 イタリアのスポーツ紙「ガゼッタ・デロ・スポルト(Gazzetta dello Sport)」の社説では、サポーターだけでなくイタリア社会全体に責任があることを訴えている。

「あの夜のカターニアの覆面集団はどこからきたのだろう?催涙ガスとコンクリートが塞ぐ通りから来たのであろうか?どこの家から、どこの学校から、どこのバーから彼らは来たのであろうか?私達にはまだわからない。フィリッポ・ラチティさんという警官をご存知であろうか?スタジアムの外にいる厄介者をなだめる職務に付いていた一人である。Sammartineseのディレクターの事故から僅か数日後に同様の件で亡くなっている。試合中のサポーターの脳裏には何が駆け巡ったのであろうか?彼らのもつスカーフ、垂れ幕、旗は一体どんな病に犯されているというのだろうか?彼らが持つスポーツへの情熱を激情へと駆り立てたのは一体なんであろう?イタリア、我が国の人々は問題を抱えている。過激なサポーターだけ問題とせず、この国の構造、教育組織、さらに私達の家庭を省みてみてはいかがだろうか」

■イタリアサッカー界全体に及ぶ波紋と今後

 イタリアのジョヴァンナ・メランドリ(Giovanna Melandri)スポーツ・文部科学大臣とイタリア五輪委員会のジャンニ・ペトルー(Gianni Petrucci)会長、イタリアサッカー連盟(Italian Football Federation:FIGC)のルカ・パンカリ代表(Luca Pancalli)の会談の後、プロアマ問わず国内で行われる全てサッカーの試合を、告知があるまで中止にするとし、来週シエナで予定されているルーマニア代表との親善試合までもが中止とされた。

 イタリアのスポーツを統括するイタリア・オリンピック委員会ではこの件に対する施策を議論するための緊急会合を4日に行う予定であり、5日にはロマーノ・プロディ(Romano Prodi)首相とパンカリ代表との会合も予定されている。

 パンカリ代表は「国内においてフットボールはひとまず休止しておくべきだ。38歳の警官がこんな事で命を失った事について、償うべき言葉もない。完全に容認できないこと」との声明を発表している。

 イタリア国内で、サッカーによる暴動で人が死んだのは1962年の12人が最初である。今回の暴動に関して一番の不安材料は、計画的なものではなかったかという点にある。手製の爆弾を用意していたというのは、事前準備があったということになる。この件によって一旦国内全ての試合が中止されるも、試合のスケジュール変更や試合開始時間を早めるだけでは社会的動揺は鎮められそうにない。

 写真は、カターニアの本拠地スタディオ・アンジェロ・マッシミーノから出てきたカターニアの警察署長(中央)。(c)AFP/Marcello PATERNOSTRO