
【国境なき医師団】
今日の世界的な食糧価格の高騰を受けて、食糧援助が実施されている。国境なき医師団(MSF)はそうした中、子どもたちを栄養失調の危険から救うには、成人向けの食糧を与えるだけでは不十分である点に警鐘を鳴らす。MSFは各資金拠出機関に対し、乳幼児向けの特別な食品を援助食糧の品目に加えるよう要請する。
MSFは食糧援助の増大への呼びかけを支持しているが、それだけでは十分ではない。
MSFの必須医薬品キャンペーンの栄養アドバイザー、スーザン・シェパード医師は話す。「食糧の価格が高騰すると、最初に切り詰める、あるいは切り捨てられるのは、乳幼児が最も必要とする乳製品などの食品です。このため、資金拠出機関は成人の栄養ニーズに対応した栄養強化粉だけでなく、成長期にある乳幼児が必要とする、栄養に特別に配慮した食品を提供することが緊急に必要なのです。」
MSFが活動する国の中においても、食糧の価格が急激に高騰している。シエラレオネを例にとると、MSFによる現地市場の観測では、2007年12月から2008年2月までの間で、砂糖、小麦粉、油、米の価格は40%増加した。2005年のニジェールにおける食糧危機の際、ミレット*の価格が3倍に増加し、MSFの診療所には栄養失調に陥った子どもが殺到したことを思い返すならば、これは憂慮すべき事態である。
今日一般的に行われている食糧援助では、乳幼児に対しては、成長に必要な栄養素の一部しか含んでいない栄養強化粉などの不適切な食品が提供され続けている。幼い子どもたちはミルクなどの動物性栄養素に含まれる特別な栄養素を含んだ食事を必要とする。必須栄養素を摂取できなければ、栄養失調に陥る危険性が高まり、その結果さまざまな病気にかかりやすくなり、最終的には命を落とす危険性が高まる。
シェパード医師は語る。「残念ながら、資金拠出機関は食糧援助に画一的な手法をとり続けています。誤った食糧援助のために、子どもたちは依然として栄養失調に陥り、病気になり、不必要に命を落としてしまうのです。」
栄養学的には、生後6ヵ月から2才までの時期は子どもの成長にとって重要な時期である。通常、生後6ヵ月で母親は離乳食で授乳を補い始める。しかし、アフリカの角(アフリカ大陸東端部)地域やサヘル地域(サハラ砂漠南縁)など、栄養失調に脅かされている地域で暮らす母親にとって、乳幼児に必要な栄養を満たすのは困難である。食料があまりにも高額、あるいは子どもに適した食料が手に入らないためである。食料価格が高騰すると事態はさらに深刻になる。
食糧援助を子どもの栄養ニーズに見合ったものに変えることは可能である。幼い子ども特有のニーズに適合した栄養素を豊富に含んだ食品は存在しており、各国の保健省や国際機関が導入して成功を収めている。調理が不要で、水を加えることや冷蔵保存の必要もないそのまま食べられる栄養治療食(RUF)は、粉ミルクなどの必要不可欠な原料から作った高エネルギーのペースト状の食品で、子どもが必要とするあらゆる種類の栄養素を与えることができる。MSFは資金を拠出する各国政府に対して、現行の食糧援助政策を見直し、栄養補助食品を提供する戦略を展開するように要求している。
各世帯が子どもを育てるためにさまざまな食料を購入できることが理想であるが、これが不可能な場合には、子どもたちが栄養失調に陥ることがないよう、栄養補助食品を入手できるようにするべきである。
栄養失調は、500万人の5才未満児が毎年命を落とす原因であり、これは医療上の緊急事態である。世界保健機関(WHO)の推定では、全世界で1億7800万人の子どもが栄養失調に陥っており、常時2千万人の子どもが最も重度の栄養失調に苦しんでいる。
*キビ・アワ・ヒエなどの雑穀類の総称
(c) 国境なき医師団



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