【9月2日 AFP】イベリア半島南端の英領ジブラルタル(Gibraltar)に1日、大きな木製の十字架を背負ったスペイン人男性が到着した。この男性は、同地をめぐる英・スペイン両政府間の対立に終止符が打たれるよう、神の助けを乞うためにスペインから4日間かけて歩いてきた。

 スペインとジブラルタルとの境界に位置する空港の滑走路を横断したフスト・マルケス(Justo Marquez)さん(50)が背負った十字架は、重さ約10キロ、高さ約3メートル、幅約2メートルで、最下部には車輪が取り付けてある。

 現在失業中のマルケスさんは、白いシーツをチュニックのようにまとい、「飢餓や戦争はもういらない。地球に平和を」と書かれたプラカードを首から下げてジブラルタルに現れた。ここで24時間の断食を行い、神に祈りをささげてからスペインに戻る予定だという。

 マルケスさんは、「ジブラルタルに入るのに問題はなかったし、あるとも思っていなかった。私の目的は、この対立の解消を政治家ではなく神に求めるために、ここで24時間過ごすことだ」と述べた。

 面積約6.8平方キロメートル、人口約3万人のジブラルタルは、1713年にスペインから英国に永久割譲された。スペイン政府はそれ以降、幾度となく返還を求めてきたが、英政府は現地住民らの意向に反するとしてこれを拒否している。

 最近の対立激化は、地元自治政府が人工岩礁の建設に着手したことがきっかけで始まった。スペインは7月末にジブラルタルとの国境の車両検問を強化。以降、検問所では長蛇の列が見られるようになっている。この問題をめぐっては、欧州委員会(European Commission)が監視団を派遣する予定だ。

 フランスパン1つと水が入ったリュックを持って、8月29日にスペインの港町マラガ(Malaga)を出発したマルケスさんは、約140キロの距離を歩いてジブラルタルに到着した。帰路ではバスの利用を考えているというが、もし背負ってきた大きな十字架がバスで運ぶことができない場合は、ジブラルタルに置いて帰るという。(c)AFP