【8月22日 AFP】1970年代にリチャード・ニクソン(Richard Nixon)元米大統領を辞任に追い込んだ政治スキャンダル「ウォーターゲート(Watergate)事件」を暴く証拠となった盗聴テープのうち、未公開だった最後の会話記録が21日、公開された。

 米カリフォルニア州にあるリチャード・ニクソン大統領図書館(Richard Nixon Presidential Library)がウェブサイト「www.nixonlibrary.gov」で新たに公開したのは、1973年4~7月に録音された会話記録で、デジタル音声のMP3形式で340時間にも及ぶ。

 ウォーターゲート事件では、盗聴された会話の大半が既に公開されているが、今回公開されたテープは米国がベトナムから撤退した後のソビエト連邦との歩み寄り期間について歴史的洞察を提供するもので、歴史学者や大統領関連秘話のファンにとって興味深い内容となっている。

 たとえば1973年6月、歴史的な米ソ首脳会談で、ソ連のレオニード・ブレジネフ(Leonid Brezhnev)書記長(当時)とニクソン大統領が米大統領執務室で交わした会話だ。雑音の多い録音の中でブレジネフ書記長は、ニクソン氏がカリフォルニア(California)州サンクレメンテ(San Clemente)に保有し「西のホワイトハウス」と呼ばれていた公邸カサ・パシフィカ(Casa Pacifica)への招待に謝意を伝えている。

ブレジネフ氏:「サンクレメンテ訪問については当初、疑いの気持ちを持っていた」

ニクソン氏:「そうでしょうね」

ブレジネフ氏:「だから、あなたに会いに来た、大使を通じて連絡を取ったのだ。だが今は、考えを改め(て訪問を決め)たことに、とても満足している。特に、このサンクレメンテの邸宅の名にあなたがこめた象徴的な意味が…」

ニクソン氏:「平和の家」

ブレジネフ氏:「その通り。そこへ行くのを嬉しく思う。象徴的な(邸宅の)名が、現実となると信じている」

■ペレとの会談も

 ニクソン大統領は任期中、ホワイトハウス(White House)と大統領専用の別荘キャンプデービッド(Camp David)に盗聴器を設置し、会話を録音していた。盗聴テープの記録はいずれも、数百時間分が国家安全保障上の理由により機密扱いとなったまま部分的に開示が控えられているが、将来的には機密解除される可能性もある。

 ちなみに、今回公開されたテープの中には1973年5月に「サッカーの王様」こと元ブラジル代表のペレ(Pele)氏がホワイトハウスを訪問した際の会話も含まれている。大統領執務室でペレ氏と面会したニクソン氏は、「あなたは世界で最も偉大な人物だ」と語り掛け、ペレ氏は米国にサッカーを普及させる計画を披露。また、こんな会話も記録されている。

ニクソン氏:「あなたはスペイン語を話すんですか」

ペレ氏:「いいえ、ポルトガル語です。まあ、どちらも同じようなものです」

(c)AFP/Ivan COURONNE