【8月14日 AFP】堅調な経済成長とほぼゼロの失業率を誇るイベリア半島南端の英領ジブラルタル(Gibraltar)は、すぐ隣のスペインとは対照的に繁栄を謳歌している──。

「英国とスペインは今後何年も続くであろう低成長に直面している。経済においては、ジブラルタルが歪曲した時間の中に取り残されたように感じられることもある」と、ジブラルタルの商工会議所は年次報告書で述べている。

 スペインが英国からの返還を求めるジブラルタルの12年のGDP(国内総生産)は12億ポンド(約1800億円)で経済成長率は7.8%だった。一方、英国は同0.2%、2008年の不動産バブル崩壊の余波に苦しむスペインはマイナス1.4%だった。

 ジブラルタルは、面積わずか6.8平方キロメートル、人口約3万人の英自治領。1人あたりGDPでは世界トップクラスで、失業率も2.5%だ。一方、スペインの失業率はその10倍以上の26.3%で、特にジブラルタルと隣接するアンダルシア(Andalucia)州の失業率は35.8%にも上る。毎日およそ1万人のスペイン人が国境を越え、ジブラルタル側で働いている。

 スペインは7月末、ジブラルタル自治政府が人工岩礁の建設に着手した後、ジブラルタルとの国境の車両検問を強化した。ジブラルタルとスペインとの対立は、ジブラルタルの経済的成功をきっかけに以前から続いており、スペイン側はジブラルタルがスペイン企業の租税回避地(タックスヘイブン)になっていると非難している。

■低税率はタックスヘイブンか、スペインと対立

 ジブラルタルには消費税がなく、2011年1月には租税回避に利用されていた「免税制度」を廃止。代わりに一律の法人税10%を導入した。これはスペインの法人税率30%よりもはるかに低い税率だ。

 この優遇税制により、ジブラルタルは銀行・金融部門が成長、観光業、港湾事業とともにGDPの25~30%を占めるようになった。オンライン・ギャンブル関連もGDPの15%ほどを占めている。

 ジブラルタル経済を35年間観察してきたという英ボーンマス大学(Bournemouth University)のジョン・フレッチャー(John Fletcher)教授は、「ジブラルタルの経済は、英国防省へのサポートを提供するブルーカラー経済から、高学歴の専門家の割合の高い経済に成長した」と語る。

 ジブラルタルに正規に登録されている企業は1万8000社。世界各国の腐敗実態を監視する非政府組織(NGO)、トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)スペイン支部のヘスース・リスカノ(Jesus Lizcano)氏は、ジブラルタルの優遇税制はスペインにとって不当競争となっていると述べ、ジブラルタルが英国の持つタックスヘイブンの1つだと主張する。

 だがジブラルタル側は、ジブラルタルがタックスヘイブンであるとの主張に反論している。

 ジブラルタル自治政府のスチュアート・グリーン(Stuart Green)報道官は、「欧州連合(EU)の規則、規制を全て順守しており、われわれはタックスヘイブンではない」と述べた上で、多くのEU加盟国よりは所得税と法人税が「多少低め」であることを認めた。(c)AFP/Katell ABIVEN