【6月7日 AFP】安倍晋三(Shinzo Abe)首相は6日、AFPとの独占インタビューに応じ、「アベノミクス(Abenomics)」と呼ばれる自身の経済政策について、世界第3位の日本経済の再生には「この道しかない」と語った。

 国際通貨基金(IMF)はこの数日前、財政支出拡大と金融緩和という安倍首相の計画を歓迎しつつも、膨れあがる日本の国債に対して「相当なダウンサイドリスク」があると警告していた。

 安倍首相は「日本はこの15年デフレーションのなかで、経済が低迷していました」と話す。「GNI(国民総所得)においても、50兆円縮小してしまった。そのなかで、日本は世界の中で存在感を失いつつあったわけです」

「そこで、私はデフレから脱却するため、大胆な金融政策と、機動的な財政政策と、民間の投資を喚起する成長戦略を進めていく。この3本の矢によって、日本がデフレから脱却して経済を成長させていくことは、世界の経済にも大きく寄与することは間違いない」

 今年の日本の経済成長率を1.6%と予想するIMFは、先月31日に発表した報告書の中で、アベノミクスが「数十年間にわたるデフレと低成長に終止符を打ち、国債の増加を逆転させるまたとない機会」を提供するとして「見返りは大きいだろう」と評価している。

 だが、同報告書では同時に、成功が保証されているわけではなく、すでに経済規模の2倍以上に膨らんでいる公的借り入れを抑制して、税収を増やす必要があると警告している。「国債を減らすための具体的な財政措置の欠如や、消費増税の遅れにより、国債利回り上昇のリスクが高まる恐れがあり、これによって財政および金融部門の安定性が脅かされる可能性がある」(同報告書)

 IMFの警告は、日本の株式市場が混乱するさなかに発せられた。5年ぶりの高値を記録していた日本株式市場は、アベノミクスは形だけで中身がないとする一部の投資家の懸念に同調し、この数週間で急落している。

 だが安倍首相は6日のインタビューで、こう反論した。「日本には累積債務の問題があります。デフレから脱却しない限り、いずれにせよ、この累積問題は解決しないわけですから、この道しかないと思います。現在、おおむね順調に日本の経済は回復している」

 インタビューは、フランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領が3日間の日程で来日した直前に行われた。仏大統領の国賓としての来日は17年ぶり。

 日本政府はこれに先立ち、フランスが中国にヘリコプター着艦装置を最近売却したことについて懸念を表明していた。日本政府は、中国が領有を主張する尖閣諸島(Senkaku Islands)周辺で自国の存在感を強めるためにこの装置を使用する恐れがあると述べている。尖閣周辺では昨年、両国によるにらみ合いが長く続いた。

 アジアの二大強国である日中の関係は、中国が影響力を強めるにつれて、ひどく悪化してきている。日本は、西側同盟国からの支援を求めて、「魅力攻勢」とも言える動きを始めている。

 安倍首相はAFPとのインタビューで、フランスの海軍力を称賛した上で、日仏が経済レベルでの協力のみならず、アジア太平洋地域の安全保障環境が変化している領域でも協力体制を敷くことは「時代の要請である」と語った。

 オランド大統領には、閣僚6人のほか、原子力大手アレバ(Areba)の最高経営責任者(CEO)など仏財界の要人40人が随行している。

 フランスと日本は今回、原子力産業分野の協定を結ぶとみられている。2011年の福島原発事故の影響で日本国民の間では原発に対する不安が広がっているが、原子力推進派の安倍首相は、安全性が保証された時点で、さらに多くの原発の再稼働を命じる意向を表明している。

 原発事故以前の日本は、電力の30%前後を原子力で賄っていた。現在、稼働中の原子炉は2基だけで、その割合は日本のエネルギーミックスのごく一部にすぎない。米原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute)によると、一方のフランスは対照的に、エネルギー需要の75%前後を原子力に依存しているという。

 日仏両政府は、原子力分野の調査・研究を行っている政府系組織、仏原子力庁(Atomic Energy CommissionCEA)と日本の原子力規制委員会(Nuclear Regulation AuthorityNRA)との間での連携協定を結ぶ見込みだ。(c)AFP/Jacques Lhuillery