【4月8日 AFP】中国が今月、ベトナムと領有権を争う南シナ海(South China Sea)の西沙諸島(パラセル諸島、Paracel Islands)へのクルーズ観光ツアーを開始すると、中国国営新華社(Xinhua)通信が7日、報じた。

 西沙諸島の周辺海域では3月、中国船がベトナム漁船に発砲したとしてベトナム政府が中国を非難したばかり。南シナ海の領有権をめぐって続く中国と近隣諸国との対立が、観光ツアー開始でさらに激化するのは必至とみられる。

 5月の労働節(メーデー)の連休に合わせて始まる観光ツアーは、西沙諸島の中でも開発が進み中国軍が駐屯する永興(Yongxing)島の三沙(Sansha)市を訪れるというもの。宿泊施設など観光客向け施設が不足しているため、ツアーはクルーズ観光に限定されるという。

 6日に海南(Hainan)島で開催された博鰲アジアフォーラム(Boao Forum for Asia)で、海南省の譚力(Tan Li)副省長が明らかにしたという。

 既に、海航(Haihang)グループによって定員2000人の三沙ツアー用クルーズ船が完成しているほか、海南港航(Hainan Harbor and Shipping Holdings)が2隻目を建造中だという。

■中国が実効支配する西沙諸島、新設された三沙市とは

 2012年に新設された三沙市は人口約1000人で、主産業は漁業。飲料水などの生活物資は船での輸送に頼っている。

 市内にはホテル(全56室)が1軒しかない。また、インターネットに掲載された写真によれば、銀行、スーパーマーケット、ピンク色の壁の図書館、ヤシの木々に囲まれたバスケットボールのコートが1つずつある。

 約40の小島や礁から形成される西沙諸島(パラセル諸島)をめぐっては、1974年に当時の南ベトナムと中国が交戦。以降、中国が実効支配を続けている。(c)AFP