【3月26日 AFP】米議会の独立監査機関、米政府監査院(Government Accountability OfficeGAO)は25日、炭疽(たんそ)菌などを用いたバイオテロの研究施設の建設や運営に関する統一的な基準が欠如した状態が続いているため、事故が起こりかねないと警告した。

 米政府監査院によれば、この問題についてはすでに2009年の報告書で指摘していたにもかかわらず、研究目的や安全を管轄する機関はいまだに1つもないという。

 25日に発表した報告書のなかで政府監査院は、米国の財政状況が厳しくなっているためバイオテロ関連研究に優先順位をつける必要性が高まっており、この問題は3年前よりも深刻になっていると指摘した。

■統一基準の策定と研究の優先順位付けを求める

 ウイルスや細菌を用いたバイオテロや感染症の大流行などへの対策を研究する米国内の施設は、2001年9月11日の米同時多発テロ以降増え続けてきた。

 2001年に炭疽菌入りの郵便物が政府関係者らに送りつけられ5人が死亡した事件を機に、危険な細菌類などを扱う研究施設の安全問題についての懸念は高まっているが、包括的な安全基準はない。2001年の炭疽菌郵便物事件は、起訴される前の2008年に自殺した科学者による犯行とされているものの、真実は解明されておらず真犯人は他にいたのではとの疑念も払拭(ふっしょく)されていない。

 政府監査院は新報告書のなかで、厳重な密閉型の研究施設については全国統一基準がないため、各自治体の基準に基づいて設計、建設、管理、運営が行われており、安全性などの評価は困難だと述べている。

 こうした施設の建設維持には莫大な費用がかかるが、研究の優先順位を管理する機関が存在しないため、国家予算の大幅削減に直面している今、人間も罹患する恐れがある動物の病気の予防ワクチンの研究といった重要プロジェクトが中止される恐れもあるという。

 また米政府監査院は米科学技術政策局(Office of Science and Technology PolicyOSTP)に対し、対バイオテロ研究開発のニーズを定期的に評価するとともに、厳重な密閉性を持つ研究施設の設計、建設、運用などについての全米基準を策定する必要性について調査するよう求めた。(c)AFP