【11月20日 AFP】「その国」をミャンマーと呼ぶ人あれば、ビルマと呼ぶ人もある──20日に米国大統領として初めて「その国」を訪れたバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は、両方の国名を用いた。

 米国は普段、「ビルマ」の名称を用いているが、ヤンゴン(Yangon)で行われたテイン・セイン(Thein Sein)同国大統領との会談では、オバマ大統領が選んだのは「ミャンマー」だった。会談中、オバマ大統領は「大統領がミャンマーで始めた民主化および経済改革のプロセスは、この国に素晴らしい発展と転機をもたらすでしょう」と述べた。

 しかし後刻、ミャンマー最大野党・国民民主連盟(NLD)の党首で、オバマ大統領と同じくノーベル平和賞を受賞したアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏を訪問したオバマ大統領は、同国の民主化運動家たちに好まれている国名「ビルマ」を選択。「この日は米国とビルマ、両国関係に新しい章へと続くステップとなる」と語った。

 ミャンマーの軍事政権は1989年に国名を「ビルマ」から「ミャンマー」に変更した。「ビルマ」は英国植民地時代の負の遺産であり、多数派とはいえ国民の一部でしかないビルマ民族が国を支配している印象を与える、というのが変更の理由だった。

 この新しい国名について野党および国外への亡命者らは、軍政が全く新しい国家を作ろうとしていることの象徴だとし、変更には強く反対していた。米国もこの見解を支持しており、公式には一貫して「ビルマ」を使用してきた。今後も「ビルマ」を使用すると米国政府は明らかにしている。

 ベン・ローズ(Ben Rhodes)大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は、セイン大統領に対する外交的儀礼として「ミャンマー」を使ったのだと説明。カンボジアでのASEAN会議に向かう米大統領専用機エアフォースワン(Air Force One)機内で「米国政府の立場としては『ビルマ』と呼ぶが、人それぞれ違う国名で呼んでいる」と報道陣を前に述べた。

 しかし実際のところ、オバマ大統領にとっては、国名よりもスー・チー氏の名前を発音することが一番難しかったようだ。オバマ大統領に「アウン・ヤン・スー・チー」と間違えられるたびにその顔からは、普段のカリスマ性に溢れた笑顔が消えていた。(c)AFP