【11月9日 AFP】新たな富を求めて導入した資本主義によって、世界ではいくつもの共産党政権が崩壊してきた。そうした中でも、共産党による一党支配国家を維持してきたのが中国だ。その中国も、共産主義という論理明快な統治イデオロギーから、国家主義に向おうとしている。

 8日から北京(Beijing)の人民大会堂(Great Hall of the People)で始まった中国共産党の第18回大会では、新たな最高指導者として習近平(Xi Jinping)氏が選出される見通しだ。習近平時代が近づく中、中国政府は米国の同盟国を含む多くの国と対立する危険性を冒してまでも、南シナ海のほぼ全域について強硬に領有権を主張し始めている。

 中国共産党は今も、言葉ではマルクス・レーニン主義を信奉し、党幹部を毛沢東思想で教導している。そればかりか、企業経営や大型融資にまで、社会主義の論理を持ち込んだために、中国のイデオロギー思考に大きな矛盾を生んでしまった。にもかかわらず、矛盾を解決するための政治改革は、論議されないまま放置されている。

 腐敗に対する世論の我慢は限界に達し、工場労働者や出稼ぎ労働者の不満は増大している。近隣諸国と米国は、国民の不満に愛国主義教育で応える中国共産党の行き方に、警戒感を強めている。

 1972年にリチャード・ニクソン(Richard Nixon)が米大統領として初めて訪中した際に同行したウィンストン・ロード(Winston Lord)元中国駐在大使は、新しい習近平体制が自らの存続に脅威を感じた場合、排外主義に頼る危険性があると警告する。「これから10年の間に、中国政府が経済・政治体制を変化させなければ、真の政情不安が起こりかねず、それはさらなる国家主義と、攻撃的な外交政策につながる可能性がある」

 フランス国立科学研究センター(National Centre for Scientific ResearchCNRS)の政治学者、ジャン・フィリップ・ベジャ(Jean-Philippe Beja)氏によれば、「社会主義信奉が危うくなってきた。指導部は正統性の新たな根源を探し求めている。彼らにとって、共産主義に代わる夢のイデオロギーは、愛国主義なのだ」という。

「中国の歴代指導者が1839年のアヘン戦争(Opium War)の時から抱いてきた夢を実現させ、この国に世界の正当国家たる地位をもたらしたのは中国共産党であると、彼らが誇らしげに言うのは自由だ。しかし、彼らがその誇りを守っていくには、日本はじめ近隣諸国に向って、中国共産党の正統性を主張し続けるしかない」

 さらにベジャ氏は、日中関係の現状について、こう語っている。「中国から日ごろ『日本鬼子』と蔑称されている日本は、東シナ海の5つの無人島の領有権問題で、激しい非難の言葉を浴びている。中国政府は、全土で反日抗議行動を後押しした。抗議行動は地域によって暴動化し、トヨタ、ソニーなどの現地工場の生産に深刻な損失を与えた。反日行動の盛り上がりをきっかけとして、中国メディアは中国艦隊の近代的威容を繰り返し放映している」

 しかし、現代中国の専門家である米ハーバード大学(Harvard University)のロデリック・マクファーカー(Roderick MacFarquhar)教授は、中国における国家主義の高まりは、中国政府にとって「両刃の剣」だと指摘する。

 中国指導部は「一定の注意を、特に日本との関係について、払う必要がある」という。「国家主義を過度にかき立てておいて、国家主義者たちを満足させることができなければ、彼らの怒りは時の政府に向かうことになる」。(c)AFP/Patrick Lescot