【8月20日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の傷ついた「政治ブランド」を回復すべく、美しさや芯の強さ、そして磨きのかかった政治スキルを用いて、その選挙活動にタイミング良くエネルギーを注入しているのは、他でもないファーストレディー、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)夫人だ。

 現状において、景気回復の遅さはオバマ大統領に重くのしかかり、共和党の大統領候補ミット・ロムニー(Mitt Romney)氏との選挙戦は厳しい情勢となっている。しかし、勝っても負けても最後の大統領選となる今回の選挙に、かつては政治活動にそれほど積極的ではなかったミシェル夫人も力を注いでいるようだ。ミシェル夫人は選挙資金を募り、草の根運動同士をつないで集会への参加者を動員しながら、富豪のロムニー氏とオバマ氏との間に存在する差異について、控えめだがしっかりと描くことができている。

 ミシェル夫人はアイオワ(Iowa)州で開かれた15日の集会に、赤と白のチェックのワンピースに青いベルトといった米国旗を思わせる姿で出席。「皆さんにお話したいことの一つは、過去3年半、大統領であるということがどういうことかをファーストレディーとしてそばで見てきた、ということです」と述べながら、「ええ、私はいろいろと見ましたよ」と冗談を付け加えた。そしてミシェル夫人は、「(大統領が置かれる)リスクが非常に高い中でもミスが全く許されない状況」について説明し、再びオバマ大統領支持にまわってほしいと有権者に向けて感情的に訴えた。

 有権者の関心を引きつけようとするミシェル夫人のこうした姿勢は、3日間にわたって米中西部の「スイング・ステート」と呼ばれる激戦区をバスで回り、疲労困憊(こんぱい)の大統領本人も元気づけた。オバマ陣営の広報担当者、ジェン・サキ(Jen Psaki)氏は「2人ともスケジュールが詰まっているため、なかなか一緒に選挙運動ができませんが、(本来なら)一緒にいることを好むようです」と語った。

■数々の活動に取り組むファーストレディー

 選挙運動の協力者らは、ミシェル夫人が4年前と比べて、選挙運動に力を入れているとの意見で一致する。数百万ドル規模で資金を調達するロムニー陣営にオバマ氏が及ばず苦戦する中、ミシェル夫人が主力となって行った資金集めのイベントは、4月以降で73件に上っている。その他の政治イベントも22回開催、そして少額の寄付でも状況は変えられるとのメッセージを有権者に発信する「It Takes One」の活動も主導している。

 ミシェル夫人はさらに、若者や女性、そして支持層の中心である黒人の有権者に支持を呼びかけるため、テレビ番組に幾度となく登場している。人気トーク番組「トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノ(The Tonight Show with Jay Leno)」では、ロンドン五輪に出場した女子体操のガブリエル・ダグラス(Gabrielle Douglas)選手とともにゲスト出演した。

 ミシェル夫人は直接的な政治論争をできる限り避け、健康的な食習慣を呼び掛ける運動や退役軍人家族の支援運動などに注力してきた。その結果、ミシェル夫人の人気は夫のオバマ氏をしのぎ、いわゆる「政治的財産」も獲得した。米世論調査会社ギャラップ(Gallup)によると、ミシェル夫人に対する好感度は5月時点で66%と、現在のオバマ氏の支持率45%を上回っている。

 大統領選候補者に配偶者が及ぼす政治的影響について研究しているブリッジウオーター州立大学(Bridgewater State University)のブライアン・フレデリック(Brian Frederick)氏は「2008年と今年の(大統領選の)大きな違いは、(3年半の)実績があることと、好感度が下がったことだ」と指摘した。その上で、「ミシェル夫人については過去4年間、(オバマ大統領と)同じように好感度が大きく下がることはなかった。人気が高い代理人がついていることは、大統領の助けになるだろう」とコメントした。(c)AFP/Stephen Collinson