【6月4日 AFP】ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は2日、北極における地球温暖化の影響を自ら確認するため、圏内を船で視察した。クリントン長官の視察は、沿岸諸国間による北極圏未開発原油をめぐる資源争奪戦の幕開けとなりそうだ。

 クリントン長官は、ノルウェーのヨーナス・ガール・ストーレ(Jonas Gahr Stoere)外相をはじめとする政府関係者や科学者らとともにノルウェーの調査漁船に乗り、北極圏を海上から視察。その後の記者会見で、「北極圏の温暖化に関する実際のデータは、その多くの予測をしのぐものだった。驚きの事実というわけではないが真剣にとらえるべき」と語った。

 ノルウェーの科学者らによる試算によれば、北極圏には天然ガスや鉱物など多くの埋蔵資源があり、そのうちの石油だけでも900兆ドル(約7京円)の価値があるという。このため北極圏を取り巻く5か国は、その開発の機会を伺っている。

 その一方で、北極圏では地球温暖化によって毎年、海氷面積4万6000平方キロが失われており、また氷の溶解で商業船舶が直接北極海を往来できる航路の整備が進む可能性もある。

 北極圏の資源開発問題については、周辺諸国などが加盟する北極評議会(Arctic Council)に委ねたい米国の意向とはよそに、中国などの非加盟国も北極圏の天然資源に触手を伸ばそうとしているのが現状だ。

 北極評議会が本部を置く人口7万人のノルウェーの学術都市トロムセ(Tromsoe)は現在、北極圏の調査および原油・天然ガス開発の拠点としてその存在を高めつつある。

 北極圏の海氷が溶解することで、海底に眠る豊富な資源を狙う国々により大争奪戦が展開されるとの懸念もあるが、ノルウェーの専門家らは海洋法(Law of the Sea)に基づき、権利の大部分を主張できるのはロシア、カナダ、ノルウェー、デンマーク、米国の5か国だけだと指摘する。

 北極海に面した海岸線を持つこの5か国は、排他的経済水域の200カイリ内に北極圏の海底資源がある。排他的経済水域を越える海域についても、その海底が大陸棚として自国の海底とつながっていれば、資源の権利は主張できる。(c)AFP/Jim Mannion