【4月30日 AFP】自宅軟禁から劇的な脱出を果たした中国の盲目の人権活動家、陳光誠(Chen Guangcheng)氏(40)は現在、北京(Beijing)の米国大使館で保護されているが、米国への亡命は求めていないと、陳氏と親しい市民活動家の胡佳(Hu Jia)氏が30日、AFPの取材に語った。

 胡氏は前週末から中国当局に身柄を拘束され尋問を受けていたが、その際、陳氏がゲーリー・ロック(Gary Locke)駐中国米大使と会ったことを中国当局者から示唆されたという。

 ただ、脱出後の陳氏と会ったという胡氏によれば、陳氏は米国への政治亡命を求めてはおらず、中国に留まって自身と家族に対する不正と戦うつもりだと語ったという。「彼は中国政府に対して、彼と彼の家族を保護し、迫害を止めることを要求している。法的な権利の保護を求めている」(胡氏)

 陳氏については、脱出後に在北京米国大使館に保護されたとの見方が出ていたが、これまで米当局はこれを否定も肯定もせず、コメントを拒否していた。

 北京では5月3日に毎年恒例の米中戦略・経済対話が開催され、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官とティモシー・ガイトナー(Timothy Geithner)財務長官が出席予定。陳氏の件が米中関係を脅かす恐れも懸念されている。

■軟禁中に暴行、温首相に捜査要求

 独学で法律を学び弁護士として活動していた陳氏は、山東省当局が「一人っ子政策」の名の下に避妊や中絶を強要していると告発したことや、法律知識を用いて土地の差し押さえなどの不正に苦しむ人々の手助けをしたことによって世界的に有名になった。4年間を刑務所で過ごした後、2010年9月から妻子とともに自宅軟禁下に置かれていた。

 しかし陳氏は22日、支援者の助けを借りて数十人の監視の目をかいくぐり、軟禁下にあった山東(Shandong)省の自宅からの脱出に成功。その後、自身と家族に対する当局の虐待の事実を訴える動画を公開した。

 動画の中で陳氏は温家宝(Wen Jiabao)首相に対し、自宅軟禁時の厳しい状況や、東師古(Dongshigu)村当局の命令による妻と母への殴打の事実を詳細に訴え、捜査を要求。「温首相、あなたがもしこの事態を無視すれば、国民はどう思うでしょうか?」と語りかけている。(c)AFP/Claire Cozens

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【参考】動画共有サイト「ユーチューブ」に掲載された、陳氏が脱出について語る動画(中国語)