【4月19日 AFP】18日付の米紙ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)は、アフガニスタン駐留米兵が旧支配勢力タリバン(Taliban)戦闘員の遺体とともにポーズをとって撮影された写真を掲載した。

 アフガニスタンでは米兵による地元民感情を逆なでするような事件が続いていたが、新たに写真が掲載されたことで、アフガニスタンにおける反欧米感情が再燃し、2014年末までの撤退を目指している北大西洋条約機構(NATO)と米国にとって新たな逆風になった。

 ベルギー・ブリュッセル(Brussels)のNATO本部で記者会見したレオン・パネッタ(Leon Panetta)米国防長官は、問題となった写真に関与した兵士は処罰すると述べた。

 同時にパネッタ長官は、アフガニスタンで暴力を再燃させる恐れがあるとして写真掲載を見送るよう求めていたにもかかわらず、ロサンゼルス・タイムズが写真掲載に踏み切ったのは遺憾だと述べ、「戦争が醜く暴力的であることは理解している。そして若者たちは衝動に駆られて愚かな判断をするときもある」と付け加えた。

 ロサンゼルス・タイムズは、ある米兵から提供されたという18枚の写真のうち2枚を掲載した。この兵士は駐留米軍の統率や規律の崩壊が部隊の安全を脅かしていると指摘したという。

■遺体検証時に撮影

 掲載写真の1枚は、タリバン戦闘員の遺体の手を米兵の右肩に置いて撮影されたもの。もう1枚は、バラバラになったタリバン兵の脚部を逆さに持ち親指を立てた米兵らの写真だ。

 1枚目の写真は、2010年2月にアフガニスタン南部ザーボル(Zabul)州の警察署で起きた自爆攻撃の容疑者遺体検証のため駐留米軍第82空挺師団の空挺兵が現場に派遣されたときに撮影された。

 兵士らの任務は遺体の指紋を採取し、可能であれば眼球の虹彩をスキャンすることだった。しかし兵士たちはアフガニスタンの警察官と共に遺体を持ち上げたりそのそばにしゃがんだりしてカメラに向かってポーズをとったと、ロサンゼルス・タイムズは伝えている。

 2枚目の写真は1枚目の写真から数か月後に、同じ部隊がアフガニスタン警察から誤って自爆してしまったとみられるタリバン戦闘員3人の遺体検証を依頼された際に撮影された。

 同紙は、掲載された以外の写真には、胴体からちぎれた遺体の腕を持ち、中指を立てている同じ部隊の兵士を写したものもあったとしている。

■「読者に伝える責任を果たすため掲載」

 NATOのアナス・フォー・ラスムセン(Anders Fogh Rasmussen)事務総長は、これらの写真はNATOの軍事的な任務の価値観とは相容れないと述べて非難した。また写真は2年も前に撮影されたものであり、単発的な出来事だとの認識を示した。

 ジェイ・カーニー(Jay Carney)米大統領報道官は、写真を「非難されるべきもの」と述べた一方で、ロサンゼルス・タイムズが写真を掲載したことにオバマ政権は「非常に失望している」と語った。

 ロサンゼルス・タイムズは、「数は少ないが象徴的なものを選んで」写真を掲載した理由として、ニュースとしての価値に加え、「アフガニスタン駐留米軍の任務を、あらゆる面から積極的かつ公平に読者に伝える責任を果たすため」と説明した。(c)AFP/Dan De Luce

【参考】ロサンゼルス・タイムズの当該記事(英語)