【3月5日 AFP】中国で共産党当局の汚職に対する画期的な抗議の象徴となっている広東(Guangdong)省烏坎(Wukan)村が4日、村の新たな指導部を選出した。

  週末の2日間の投票で選出されたのは、7人から構成される村民委員会。新主任に選出された林祖鑾(Lin Zulian)氏は、他の6人の村民委員たちと一緒に並び「村民のみなさんの承認に感謝する。委員らに注がれている村民たちの期待を我々は理解している。必ずや目標を達成し、しっかりと仕事をする」とあいさつをした。村民たちは拍手で迎えた。

  烏坎村では地元共産党指導部が「まるで皇帝のように」村を運営し、土地の不正収用を行ってきたとして、不満をもった村民たちが昨年9月から抗議運動を展開。指導部を退陣に追い込んでいた。

 当初、烏坎村の抗議行動は中国の他のデモなどと同様、一時的なもので終わるとみられていたが、12月に行動のリーダーの1人、薛錦波(Xue Jinbo)氏が警察による拘束中に死亡したことから、村民たちは行動をさらに激化させ、村に通じる道路をバリケードを築いて封鎖し、1週間以上にわたって治安部隊と対峙した。

 この時点で予想外にも共産党当局が譲歩し、不正収用に関する調査を約束するとともに、同村では初となる「開かれたプロセスによる」選挙の実施を村民らに認めた。

 この結果、実施に至った村民委員会の選挙はまず3日に行われた。地元学校の校庭では、臨時の木製ブースの前に票を投じようという人びとが列を作り、6800人を超える村民が投票し、投票率は81%に上った。しかし、同日開票した結果、当選に必要な票数を集めた候補は2人だけしかいなかったため、選挙委員会は翌4日に第2回目投票を行うことを発表した。

 第1回投票で当選した2人は、主任に選出された前述の林氏と、副主任に選出された楊色茂(Yang Semao)氏。主任の林氏は一連の抗議行動のリーダーの1人で、当時の村長が退陣した後、暫定村長にも任命されていた。この後、2回目の投票で選出された残る5人もほとんどが抗議行動のリーダーたちだった。

 中国の各村では、村民を代表する委員会を選ぶ直接選挙は数十年にわたって行われているが、上層部に異議を申し立てる人物を避けたい地元共産党当局が候補者を推薦するのが通常で、無競争選挙となることもしばしばだ。

 今回の烏坎村の選挙は、共産党当局が慎重に監視し、また高圧的な態度は避けながらも村民の見える場所に警官も動員された。

 また同様の請願を申し立てている人たちが、烏坎村が「開拓した」自由を自分たちの抗議のアピールに用いたいと中国各地から集まりもしたが、すぐに連行されていた。そのうち少なくとも3人は別の省からやって来ていた。また同じ広東省から来たという人びとは、烏坎村と同様、土地の不正収用と汚職を抱えていると訴えた。(c)AFP/Marianne Barriaux