【11月12日 AFP】野田佳彦(Yoshihiko Noda)首相が日本の環太平洋連携協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)交渉への参加を表明したことは、米ハワイ(Hawaii)にアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を迎えるバラク・オバマ(Barack Obama)大統領のアジア構想にとって追い風となった。

 かつてその姿が必ずしも明確ではなかったTPPを、アジアから太平洋にまたがる自由貿易圏に変貌させるには、世界第3の経済大国である日本の交渉参加が不可欠だと見られていた。

 ハワイ入りしているオーストラリアのジュリア・ギラード(Julia Gillard)首相は記者団に「よい兆しだ。われわれは以前から明確に、日本がTPP交渉に参加すれば歓迎すると言ってきた。包括的で野心的な合意を目指す枠組みの中で全ての点で合意に達したい」と語った。

 交渉が数年間にわたって長期化する可能性を専門家らが指摘する中、ロン・カーク(Ron Kirk)米通商代表は、「交渉に参加するには、日本はTPPの貿易自由化の高い水準を満たす構えが必要だ。そして非関税障壁を含む農業、サービス、製造分野の貿易障壁について、米国が懸念する特定の諸問題に対処する備えをしなければならない」と述べ、日本は農業保護を止めなければならないだろうと指摘した。

■長く困難な交渉、米国の譲歩も必要に

 米国がアジア各国に、国営企業に関する新たな貿易ルールと農業分野の関税引き下げを受け入れさせるには、困難な交渉の中で米国自身も保護主義的な障壁で譲歩することが必要になるだろう。

 TPP経済圏が誕生すれば、世界第2の経済大国で域内の「巨人」である中国が蚊帳の外に置かれる恐れがある。中国は、アジアの途上国の手に届かないほど高い目標を米国が目指していると批判している。

 当初2005年にブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4か国で調印されたTPPは、当初の参加国がグループの核となり、加盟への門戸は閉ざさず、先に参加している国と同じ条件に合意した国を順次参加させるという構想だ。

 現在オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国が交渉を行っており、日本の交渉参加で10か国目となる。
 
 世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)のドーハ・ラウンド(Doha Round)の交渉が暗礁に乗り上げている今、TPPのような太平洋を横断する自由貿易協定(FTA)は大きな意味を持つ。

 シンガポールに拠点を置くシンクタンク、太平洋経済協力会議(Pacific Economic Cooperation CouncilPECC)によると、アジア太平洋地域の2010年の経済規模は35兆ドル(約2700兆円)に上り、世界全体の半分強を占める。一方、APEC加盟21か国・地域は、世界人口で約40%、世界の貿易高で44%を占めている。(c)AFP/Andrew Gully