【11月6日 AFP】この半年間、日本を襲った世界最悪規模の原子力災害の対応に睡眠時間以外の全ての時間を割いてきた細野豪志(Goshi Hosono)原発事故担当相(40)は、あまり不安な様子を見せない。

 若々しくテレビ映りもよい細野氏は、3月11日の東日本大震災の発生直後から、政府の先頭に立って東京電力(TEPCO)福島第1原発事故の処理に当たってきた。

 先週、事故を起こした原子炉の中で核分裂によって生じる放射性物質が検出されるなど、福島第1原発では相次いで問題が発生しているにもかかわらず、細野氏は前向きだ。

「事故の収束に関してはよくここまできたとも思う」 と細野氏はAFPのインタビューに語った。「最大の貢献をしたのは現場の作業員のみなさんだ。現実にステップ2(冷温停止状態の確認)の終了が視野にはいってくるところまでもってきた作業員のみなさんの努力は高く評価されるべきものと思う」

 細野氏によると、政府と(多くの日本人が問題の元凶だと考えている)東京電力は、年内にステップ2の完了を宣言できる見込みだという。

 いまや焦点は、損傷した原子炉の安定化という課題から、漏えいや爆発によって大気、土壌、海洋に放射性物質が拡散した環境の浄化や、大量の放射性廃棄物の処分に移り始めていると、細野氏は述べた。

■当面の課題は冷温停止

 東日本大震災による死者は2万人に達したが、25年前のチェルノブイリ(Chernobyl)原発事故以来、地球上で最悪の原発事故となった今回の原発危機による直接的な死者は1人もいない。

 原発周辺の広い範囲で多数の住民が自宅へ戻ることができず、各地で生産された食品の安全性への疑念もある中、うんざりした国民は政府の取り組みに対して懐疑的なままだ。

 事故以来初めてとなる記者の原発立ち入りを今週実施することを許可した細野氏は、「冷温停止状態を確認することが当面の最大の課題だ」と語り、「そこまではとにかく油断せずに一歩一歩すすんでいきたいと思う」 と述べた。

 細野氏は事故後の政府の対応が必ずしも完璧ではなかったことを率直に認め、「3月11日以降当初の状況を振り返ると本当に厳しい時期がつづいていた」と語る。

「事故前の対応は率直に不十分だったと思う」「それは電力会社も十分な備えがなかったし行政の体制もいろんな不備があった」と細野氏は述べ、 「そういった(当初の困難な)状況を乗り越えることはできてきたと思う」 と付け加えた。

■今後の課題は廃棄物処理

 一方、細野氏は、原発から出る放射性廃棄物や原発から20キロ圏内の警戒区域のがれきなどの処理という厄介な問題は、解決からはほど遠いことを認めてこう語った。「日本では低レベルも含めて今回の事故を踏まえれば相当の量の廃棄物がでる。それを海外に持っていって処理するとか日本はそれについてはまったく関与しないのだという選択はおそらくないだろう」

 だが、国内の受け入れ先を探すことも容易ではない。そのことについては、細野氏も、他の多くの政治家と同様、うやむやにしたいようだ。

 日本政府は福島県内に、最終処分先が決まるまでの間、廃棄物を少なくとも30年間貯蔵するための中間貯蔵施設を建設する計画を立てている。

 しかし、候補地付近の住民らの反対により、依然として中間貯蔵施設の建設地も見つかっていない。細野氏は、科学技術――そして時間――が解決の助けになるかもしれないと期待を寄せる。「かなりの年月をかけた研究開発が必要だ。具体的には減容化する技術がでてこないと大量の放射性廃棄物を他の場所に移動することは好ましくない」

■民主党若手から閣僚へ、細野氏

 民主党(Democratic Party of JapanDPJ)の若手有望株だった細野氏は、菅直人(Naoto Kan)前首相のもとでことし1月、首相補佐官に就任。3月11日から約1か月後に原発事故対応担当の首相補佐官となり、6月下旬に内閣府特命担当大臣に就任し、原発事故の収束などを担当した。

 細野氏は、不人気だった菅首相が8月に退陣したことを受けて発足した野田佳彦(Yoshihiko Noda)首相の内閣で再任された。再任された閣僚はわずかだった。

 京都大学(Kyoto University)卒で妻と1児がいる細野氏は日本の政界では比較的若手だ。驚くような失言でトラブルに巻き込まれる大物政治家も多い中、細野氏は機転の利いた発言をすることができる。

 だが、細野氏の12年間の政治家としてのキャリアもトラブルと無縁だったわけではなく、2006年には人気の女性テレビキャスターとの不倫騒動が週刊誌を賑わせた。(c)AFP/Harumi Ozawa