【10月25日 AFP】リビアの最高指導者だったムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の死亡をうけて全土の「解放」を宣言した反カダフィ派「国民評議会(National Transitional CouncilNTC)」は、シャリア(イスラム法)を基本として新生リビアの法律を整備していく方針を示した。イスラム教主義者たちは穏健な姿勢をとると話しているが、女性を中心に懸念も広まっている。

 国民評議会のムスタファ・アブドルジャリル(Mustafa Abdel Jalil)議長は23日、東部ベンガジ(Benghazi)で行ったリビア解放を宣言した中で、シャリアが法律の基本になると言明した。「シャリアに反する法律は全て無効だ」と語った。また、違法となる法律の一例として、42年続いたカダフィ体制下でイスラム教では認められている一夫多妻を禁じる法律をあげた。

 アブドルジャリル氏が、安全保障や教育などの重要課題より先にシャリアの役割について語ったことは、歴史的な演説に耳を傾けていた多くのリビア人を驚かせた。

 同じ演説でアブドルジャリル氏は、シャリアと並行してリビアにイスラム金融を導入すると発表した。イスラム金融では、金利を得ることを反道徳的とみなして禁じている。

■国内外から懸念の声

 これに対し、前週発足したばかりの中道右派「国家連帯党(Party of National Solidarity)」創設者の1人は、NTCの指導部が新生国家の政策について語るのは時期尚早だと批判した。

 欧米もアブドルジャリル氏のコメントに直ちに反応した。欧州連合(EU)のキャサリン・アシュトン(Catherine Ashton)外交安全保障上級代表は24日、シャリアの導入に際しては人権と民主主義の原則を尊重せねばならないと述べた。

■リビア、穏健なイスラム教国に?

 しかし、カダフィ政権で司法書記(法相)を務めていたにもかかわらずカダフィ大佐と袂(たもと)を分かったアブドルジャリル氏は敬虔(けいけん)なイスラム神秘主義者(スーフィー、Sufi)で、過激主義とは相いれない人物だとみなされている。

 新生リビアが過激思想を取り入れることはないと述べていたアブドルジャリル氏は23日も、リビア人は穏健なイスラム教徒だと語り、国際社会の不安を拭い去ろうとした。

 それでも、リビア国内の政界でイスラム勢力が台頭し始めているのは確かだ。そのなかで重要な位置を占めるとみられる1人が、リビア・イスラム戦闘集団(Libyan Islamic Fighting GroupLIFG)の創設者、アブドルハキーム・ベルハジ(Abdelhakim Belhaj)氏だ。LIFGはすでに解体しているが、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との関連が取りざたされていた組織だ。

 カダフィ政権下で数十年にわたって迫害されてきたイスラム勢力は、寛容かつ民主主義的な価値観と政策の擁護者としてのイメージを売り込もうとしている。

 1980年代にトリポリ(Tripoli)の悪名高いアブサリム(Abu Salim)刑務所に8年間投獄されたことがあるベルハジ氏は、自由、公正、平等、人間の尊厳の尊重とならび、暴力によらない政権交代も新しい憲法で保障すべきだと述べ、「われわれは報道の自由や表現の自由も信じているし、われわれの宗教はこういった一連の権利に適合すると信じている」と付け加えた。(c)AFP/Simon Martelli