【8月30日 AFP】(一部更新、写真追加)民主党(Democratic Party of JapanDPJ)の野田佳彦(Yoshihiko Noda)代表(54)が30日、衆参両院で首相に指名された。ここ5年で6人目の首相となる野田氏は、東日本大震災からの復興や原発事故の収束、景気回復などに取り組まなければならない。

 前任の菅直人(Naoto Kan)氏は人気が低迷し、わずか15か月の内閣となった。菅内閣は30日午前に総辞職し、前日の民主党代表戦で対立候補4人を破って代表に選出された野田前財相は同日午後、衆議院本会議で行われた首相指名選挙で首相に指名された。野田氏は数日中に組閣を行う。

 野田氏は29日の代表選の投票前の演説で、自らがスターの力やルックスを持たない普通の人であることを強調して謙虚さを示し、穏健なリーダーシップで深く二分された民主党を1つにまとめ、野党と協議することを約束した。

 また野田氏は、自民党(Liberal Democratic PartyLDP)との大連立も除外しない考えを示している。自民党は2年前の衆院選で大敗北を喫したが、参院では法案成立を阻止できる議席数を確保している

■増税、円高対策、原発再稼働、米国重視

 野田氏には、いくつかの長期的な課題を引き継いでいる。

 野田氏は前年6月から財務相として、世界的な金融危機と東日本大震災による打撃を受けた日本経済のかじをとってきた。日本が極端な財政赤字に直面するなか、野田氏は、震災と原発事故の復興の財源として、国債発行ではなく増税を主張しており、経済規模の2倍にふくれあがった国債残高の削減に取り組むことも約束してきた。

 また、野田氏は、戦後史上最高値にまで進んだ円高を緩和させるための対策にも取り組んできた。円は世界的な景気低迷の中で資産の避難先とみなされて高騰したが、日本の輸出産業に打撃を与え、震災からの復興に向かう日本経済にも脅威となっている。

 原発をめぐっては、前任の菅氏が福島原発事故を受けて脱原発を望んでいたが、野田氏は、現在停止中の原発は安全が確認され次第再稼働されるべきとの考えを示している。

 外交政策では、日本のほかの多くの政治家と同じく、米国との強い同盟関係を支持する考えを表明し、中国の軍事費増大と海軍力増強に懸念を示した。

 また野田氏が、日本のA級戦犯は戦争犯罪者ではないとの見解を示したことは、日本の近隣国、特に韓国の怒りを買った。一方で野田氏は30日、アジア各国の経済的な相互依存関係を強調し、韓国と中国と「ウィン・ウィンの関係でいきたい」と語った。

■政権交代から2年、難題山積み

 派閥抗争や忙しい選挙日程などを一因として次々に交代する日本の首相については、民主党の政策目標が混乱する原因となっており、また、日本の国際舞台での地位を弱めていると広く受け止められている。

 日本の各紙は30日、野田氏を待ち受ける困難な課題を指摘した。朝日新聞(Asahi Shimbun)は「震災復興、原発事故対応、円高・デフレ対策、外交の立て直し……。野田氏は山積する難題に、ねじれ国会の下で対応していかなければならない」と述べた。

 2年前の政権交代以降、党内の派閥抗争や、民主党を創設した民主党初の首相となった鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)氏や賛否両論の多い派閥のボス、小沢一郎(Ichiro Ozawa)氏らの政治資金スキャンダルを受け、民主党はもがき苦しんできた。

「ちょうど2年前のきょう、歴史的な政権交代を決めた総選挙があった。その日に生まれる民主党3人目の首相は、日本に『政権交代のある政治』を定着させられるかどうかの岐路に立っている」と朝日新聞は述べた。(c)AFP/Yuka Ito