【8月30日 AFP】米国のコリン・パウエル(Colin Powell)元国務長官は28日、ディック・チェイニー(Dick Cheney)前副大統領が新たに発表した回想録で、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)政権中枢のメンバーに「卑劣な攻撃」をしていると批判した。

 チェイニー氏は新著「In My Time: A Personal and Political Memoir」が、関係者の頭を「爆発させる」ようなセンセーションを巻き起こすだろうと語っていた。

 これに対し、米CBSニュースの報道番組「フェイス・ザ・ネーション(Face the Nation)」に出演したパウエル氏は「私の頭は爆発していないし、ワシントンD.C.(Washington D.C.)で誰かの頭が爆発したのも見ていない」と語った。さらにパウエル氏は、そういった表現はスーパーで売っているタブロイド紙に載っているような言葉で、前副大統領のものではないと痛烈に批判した。

 ブッシュ政権の重鎮だった2人は、これまでにも互いに批判しあってきた。2人の意見の相違は、イラク戦争とサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権を崩壊させた2003年のイラク進攻に至る政策にまでさかのぼる。

 パウエル氏によると、チェイニー氏は、国務長官だったパウエル氏がブッシュ大統領に最善の忠告を行わずに、周囲に対して大統領の政策への辛辣(しんらつ)な批判を口にしていたと述べている。パウエル氏は「それはナンセンスだ。大統領は、毎日のあらゆる事柄について私が考えを伝えていたことをご存じだ」と反論した。

 さらにパウエル氏は、チェイニー氏が、パウエル氏の後任のコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)前国務長官や、ジョージ・テネット(George Tenet)元CIA(米中央情報局)長官らについても同様の中傷を行っていると非難した。

 チェイニー氏は、回想録の中でパウエル氏のイラク戦争への姿勢を非難している。これについてパウエル氏は「ブッシュ大統領に『壊したものは引き取らなければならない』と言ったのが誰か、チェイニー氏は忘れているのかもしれない」と述べ、「チェイニー氏と彼の多くの仲間たちは、バグダッド(Baghdad)陥落後に起きることに準備していなかった」と付け加えた。

 2001年9月11日の米同時多発テロのときに副大統領だったチェイニー氏は、米国がアフガニスタン進攻やイラク進攻を決めた時のブッシュ政権の最大のタカ派とみられている。

 パウエル氏はこう付け加えた。「チェイニー氏は書きたいことを書く自由がある。だがこれまでのところ、彼が言うように爆発的なことは何一つ見あたらないし、(吹き飛んだ)頭が路上に転がっているのも見たことがない」

(c)AFP