【6月19日 AFP】伝統的な中国文化の守護者を自負する台湾が、中国本土で使用されている簡体字を、自国の政府関連のウェブサイトから一掃する作業を開始した。

 先陣を切ってウェブサイトから簡体字をなくしたのは、毎日何千人もの中国本土からの観光客を案内する立場にある台湾観光局。台湾の標準である、簡略化されていない漢字だけを使用するようになった。

 大統領報道官によると、今回の動きは馬英九(Ma Ying-jeou)総統の直接の指示によるもので、他の省庁も観光局に続くという。「中国文化の保護者という台湾の役割を維持するために馬総統は、政府関連のすべての書類やウェブサイトで使用する漢字を、標準的な漢字のみにすべきだと考えている」

 中国本土ではその使用の是非をめぐり激しい議論を経て、識字率を高めるため1950年代に簡体字が導入された。漢字によって、元の字が何かまったく分からないほど省略されたものもあれば、元の字の一部だけが簡略化されたものもある。

 台湾では、中国からの観光客が増えるにつれて、街頭の表示や観光地、店舗やレストランなどで簡体字が普及した。そのうちに簡体字が圧倒的になるのではないかと懸念も広がっている。

 政府の簡体字使用中止の動きは民間に対しては呼び掛けられていないが、簡体字の使用を各階案内と標識だけに限っている首都台北(Taipei)の超高層ビル「台北101(Taipei 101)」のように、使用を最低限に抑えている事業体は少なくない。(c)AFP

【関連記事】IT世代に広がる「漢字健忘症」、日中比較