【6月13日 AFP】第2次世界大戦(World War II)で米海兵隊により日本軍の支配から解放されておよそ70年、グアム島(Guam)の政治指導者らは今、再び自由を求めている――今度は米国から。

■「非自治地域」「未編入領域」の地位に募る不満

 国連(UN)が非自治地域として認定する海外領土は、現在も世界に16か所残っているが、グアムはその1つ。人口18万人の米領グアムでは、住民に米国の市民権はあるが、米大統領選挙の投票権はない。経済的には米軍と観光に大きく依存している。

 そのグアムに沖縄駐留米軍8000人が移転する計画を受け、先住民のチャモロ(Chamorro)人が移住者らに追いやられてしまうのではないかとの懸念から、民族自決を求める声が島民の間で高まっている。

 今年1月の総選挙でこの問題を訴えて当選したエディ・カルボ(Eddie Calvo)新知事は、3月の施政方針演説でも、「(日本軍と米軍との)グアムの戦いで1744人もの米兵が命を落とし、島を開放したのだから永遠に植民地化が認められる、という理屈を非常に疑問に思っている」と述べた。

「われわれは今もなお(米国の)未編入領域であり、そのために持てる力の全てを出し切ることができないでいる。グアムは、コミュニティーとして目指す方向を、自ら決定できるようになるべきだ」

■自決権めぐる住民投票、12年実施めざす

 カルボ知事は、2012年に自決権を問う住民投票を行いたいと表明している。選択肢は3つ――米国の州となるか、米国から独立するか、太平洋島しょ国のミクロネシア連邦やマーシャル諸島、パラオと同様に「米国との自由連合」を形成するか、だ。

 グアムでは2000年~04年に3回、自治を求める動きがあったが、住民投票の事務手続き上の困難さから頓挫している。グアム大学(University of Guam)のロバート・アンダーウッド(Robert Underwood)学長は、米軍のグアム移転が始まる2014年までに、グアム住民は自治の方向性を決めなければならないと指摘する。「政治的に満たされていない社会は、発展に不透明性が付きまとう。この問題は今、解決することが重要だ」

 アンダーウッド氏は、グアム経済が米国に依存することは変わらなくとも、それは住民に自治能力がないという意味ではないと述べ、「世界人口のほとんどは独立している」と付け加えた。

 第2次大戦後、グアムにはさまざまな民族が暮らすようになった。現在の人口比は、先住民のチャモロ人が40%、フィリピン人が27%、他の太平洋島しょ国から12%となっている。地元の学者で文化活動家のジョナサン・ディアズ(Jonathan Diaz)氏は、グアム島に4000年前に移住したチャモロ人にこそ、島の行く末を決める権利があると語った。「移住者たちがチャモロの歴史を知り、理解するならば、われわれに投票権を認めるはずだ」

(c)AFP/Mar-Vic Cagurangan

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