【4月30日 AFP】未来の「英国王ウィリアム5世と王妃」の結婚式では、最も伝統的な瞬間において極めて現代的に自らを刷新するという逆説的な英王室の真価が発揮された。

 29日、一般家庭出身のキャサリン妃(Catherine, Duchess of Cambridge、29)と結婚したウィリアム王子(Prince William、28)は、亡きダイアナ元妃(Princess Diana)の忘れ形見であり、英王室近代化への期待を最も寄せられている人物だ。

 しかし若き王子の王位継承順位は、もっと伝統的な父、チャールズ皇太子(Prince Charles、62)に次ぐ2位。しかも王位は59年間、現在85歳のエリザベス女王(Elizabeth II)が占めてきた。「クイーンマザー」の愛称で知られた故エリザベス皇太后が亡くなったのは101歳だ。

 チャールズ皇太子は先頃、エドワード7世(Edward VII)が持っていた皇太子在位期間の最長記録を塗り替えた。こうした状況だが、ウィリアム王子には王になるための準備期間が数年はありそうだ。また王子もすぐに王位を継ぐ意志は見せていない。

 ウィリアム王子とキャサリン妃の伝記『William and Kate: The Love Story』の著者、ロバート・ジョブソン(Robert Jobson)氏は「チャールズ皇太子がその母よりも長生きすれば、国王になるのは彼だ」と断言する。

■現代的なイメージ

 1992年にダイアナ妃の崩壊した結婚生活を暴露した著書で知られるアンドリュー・モートン(Andrew Morton)氏によると、過去20年間の世論調査では、チャールズ皇太子を飛ばしてウィリアム王子に王位を継承してほしいという意見が多い。

 モートン氏はこう語る。「ウィリアム王子は、明日や来年にも王位に就くことはありがたくないことだと思っているだろう。彼を見ていると、できるだけ普通の人生を送り、国家の元首という罠に捕らわれることから逃れたがっているように思える。もしも元首を投票で選ぶとすれば、もちろん、チャールズ皇太子は脇へ追いやられてしまうだろう。けれど、それは英国のやり方ではない。善人だろうが、悪人だろうが、王位に関心がなかろうが、醜かろうが、順番がまわってきた時には王位に就くべき人が王位に付く」

 英王室は、ウィリアム王子とキャサリン妃のイメージを慎重にコントロールしているが、概して親しみやすく、時代と合ったモダンなカップルと見られている。その精神はバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)のバルコニーでキスを交わした後に、2人乗り込んで宮殿前の大通りザ・マル(The Mall)を走ったチャールズ皇太子のスポーツカー、アストン・マーチン(Aston Martin)に、「JUST WED(新婚ほやほや)」をもじった「JU5T WED」というナンバープレートが付いていたことに典型的に表れている。

 ジョブソン氏は、21世紀の英王室にとってウィリアム王子とキャサリン妃は最も重要な人物になるだろうと言う。「2人はフェイスブック世代の英王室の顔になる。英王室が生き残れば、2人と彼らの子どもたちは代々の英王室にとっても最も重要な存在になるだろう」

■ウィリアム王子に寄せられる王室改革への期待

 広報専門家のマックス・クリフォード(Max Clifford)氏は、もはや無条件に王室が尊敬を集められる時代ではないと指摘する。

 1936年にエドワード8世(King Edward VIII)が離婚歴のあった米国人女性ウォリス・シンプソン(Wallis Simpson)と結婚するため退位すると、英王室の存在は揺るいだ。エリザベス女王の子ども4人のうち3人の結婚が破綻し、女王が「驚くほどひどい年」と嘆いた1992年にもその存続は危ぶまれた。そしてチャールズ皇太子も離婚した翌年の1997年には、現在も依然、圧倒的な人気を誇るダイアナ元妃が、交通事故によってパリ(Paris)で亡くなった。

 以後、女王はインターネットを使い、王室費の削減を受け入れ、王室イメージの刷新に乗り出した。その結果、英王室は再び国を「統合するポジティブな力」とみなされるようになったとジョブソン氏は解説する。

 しかし、今回のロイヤルウェディングをめぐる英国民の熱狂は、ウィリアム王子が王室を改革するという期待感なしには生まれなかっただろう。

 王室改革のなかでも重要とみられているのが王位継承について定める1701年の「地位法」の扱いだ。「地位法」では、王位継承権は女性よりも男性が優先されることや、カトリック教徒は王位に就けないといったことが定められている。英政府はこれらの懸案事項について検討中としているが、ウィリアム王子とキャサリン妃の第1子が女子だった場合、この問題は再燃する可能性がある。(c)AFP/Denis Hiault