【3月29日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は28日、国民向けのテレビ演説で、米国がリビアでの「大虐殺」を阻止したと語った上で、リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐を武力で追放しようとすれば、イラク戦争の殺りくを繰り返すことになりかねないと忠告した。

 米ワシントンD.C.(Washington D.C.)の米国防大学(US National Defense University)から国民向けにテレビ演説したオバマ大統領は、「わたしは大統領として、大虐殺や多くの人の死を座視することを拒否した」と述べ、リビア民間人保護のために国連安全保障理事会が採択した決議に基づいてカダフィ派に空爆を加えた自らの判断を正当化した。

 またオバマ氏は、多国籍軍に参加する他国に主導権を譲ったとの批判や、戦争に疲弊した米国民に明確な戦略を提示していないとの批判に対し、「米国はたった1か月で国際的なパートナーと協力し、大がかりな多国籍軍を動員して、民間人を保護すべしという国際社会の要請に応え、攻め込んでくる軍勢を止め、大虐殺を防止し、同盟国やパートナーと共に飛行禁止空域を設定した」と、成果を強調した。

 しかし、手に負えない内戦に肩入れしてしまったのではないかとの批判や、カダフィ大佐が追放されなければ米国の威信が大きく損なわれるのではないかとの懸念が出る中、オバマ大統領は、リビア情勢の収束に向けた道筋を示すことはできなかった。

 オバマ氏は、カダフィ大佐が政権の座からいなくなることは明らかに望ましいが、そのために軍事行動を起こして体制を変えようとすれば失敗し、ひどい代償を払わされることになると主張した。

■共和党議員「妥協した行動だ」と批判

 オバマ大統領の演説に対し、米上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)委員のジョン・コーニン(John Cornyn)上院議員(共和党)は、「米議会に諮ることなく一方的に米国を戦争に突入させたことへの説明がない」との声明を発表し、オバマ政権は「足して2で割ったようなことを言っている。カダフィ大佐は退くべきだと主張する一方で、カダフィ大佐を排除するために必要な行動は拒否している」と批判した。(c)AFP/Stephen Collinson