【3月18日 AFP】中国・四川(Sichuan)省アバ(Aba)県で、チベット仏教キルティ僧院(Kirti monastery)の若い僧侶が焼身自殺し、僧院周辺で抗議デモが発生した。地元住民の話によると17日現在、警察が僧院周辺を封鎖しているという。

 人権団体「チベットのための国際キャンペーン(International Campaign for TibetICT)」によると、僧侶が焼身自殺を図ったのは16日。この日は、2008年に同県のチベット人が中国の統治に反発する暴動を起こしてからちょうど3年目にあたる。僧侶の死をきっかけに僧院の周辺で僧侶や住民ら数百人が参加してデモが起こったが、警察が解散させ、参加した僧侶らの身柄を拘束したという。ただ、AFPの取材に応じた数人の住民は、それほど大規模なデモではなかったと語った。

 国営新華社(Xinhua)通信もその後、地元政府報道官の言葉を引用し、プンツォク(Phuntsog)という名の僧侶(24)の焼身自殺があったことを確認したと報じた。ICTは僧侶の年齢について20~21歳と報告している。

 僧院のそばにあるホテルの従業員によると、僧院へ通じる道は警察に封鎖されており、住民が僧院に入ることはできるが僧侶が外出することは禁じられているという。通りの商店は16日から全て閉店しているという。

 この従業員はまた、デモの最中に警官が参加者の若者2人と僧侶1人を殴打するのを目撃したと証言した。

 僧侶の死をめぐっては、政府とICTの間で見解が分かれている。新華社によると政府は、「警察がこの僧侶をただちに病院に運ぼうとしたのに、他の僧侶たちが強引に僧院に連れていって隠したため手当てが遅れて死亡した」と主張している。一方のICTは、「火を消した後で警官たちが僧侶に暴力を振るい始めたため、救出して寺に連れ帰った。その後、病院に連れて行ったが亡くなった」と説明している。

 事件を受け、チベット亡命政府のあるインド・ダラムサラ(Dharamshala)でも、寺院に約500人が集まり、死亡した僧侶の写真を掲げてデモを行った。AFPが入手した声明によると、主催者は「中国政府にチュニジアと中東を揺るがした激震がついにチベットにも到達したと思い出させたい」と語ったとされるが、AFPの電話取材に応じた現地の僧侶は、当局の監視が付いているためコメントできないと答えた。

 ICTによると、2008年の暴動後にキルティ僧院の僧侶が焼身自殺を図るのは、今回で2回目。アバ県当局はAFPの取材に応じていない。(c)AFP