【3月14日 AFP】東北地方太平洋沖地震の影響による福島第1原子力発電所での事故を受け、米議員の一部から米政府に対し国内の原発建設に「ブレーキをかける」よう呼びかける声が上がっている。

 米上院国土安全保障委員会のジョゼフ・リーバーマン(Joseph Lieberman)委員長(無所属)は13日、米CBSニュースの報道番組「フェース・ザ・ネーション(Face the Nation)」に出演し、「これまで原発を強く支持してきたが、それは米国内で発電が可能で、クリーンなエネルギーだからだ」と説明。その上で、「日本で地震と津波の結果起きていることを十分に把握できるまで、落ち着いて迅速に(原発建設に)ブレーキをかけるべきだ」と述べた。

 リーバーマン議員は、一旦開発を停止した上で、専門家が事態を分析して、米国の原発計画にさらに必要とされるものがあるかどうかを判断すべきだと主張した。

 また、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、原発反対派のエドワード・マーキー(Edward Markey)下院議員は、地震活動が活発な地域における原発建設を一時中止するよう求めた。

■原発推進のオバマ政権も注意喚起

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、石油・石炭への依存を減らす取り組みの一環として原発の増設方針を示しており、エネルギー省(Department of Energy)に原子力産業への融資保証として185億ドル(約1兆5200億円)の予算権限を与えている。

 ホワイトハウスは13日、原発推進方針を改めて表明した一方、注意も喚起した。

 ホワイトハウスのクラーク・スティーブンス(Clark Stevens)報道官は、NYタイムズに対し「大統領は、エネルギー需要を満たすためには、多様なエネルギー供給源を確保することが必要だと考えている。これには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーや、天然ガス、環境に悪影響を及ぼさない石炭利用(クリーン・コール・テクノロジー)、原子力などが含まれる」と述べた。

■「原油依存脱却に不可欠」と推進派

 とはいえ、米連邦議員には原発支持者が依然として多い。

 チャールズ・シューマー(Charles Schumer)上院議員(民主党)は13日、米NBCテレビの報道番組「ミート・ザ・プレス(Meet the Press)」で、産油国のリビアの騒乱を例に挙げ、原油輸入への依存を「自ら断ち切らなければならない」理由の1つだと論じた。

「(原油)価格も上昇している。米経済はそのせいで打撃を受けつつあるか、受ける危険性がある。だからこそ、わたしは今でも原発に前向きだ。これまで述べているとおり、安全かつ慎重に運用されなければならないが」とシューマー議員は語った。

■「原発は大量破壊兵器」と反対派

 一方、「社会的責任を果たすための医師団(Physicians for Social Responsibility)」の役員メンバーで原発反対派のアイラ・ヘルファンド(Ira Helfand)医師は、原発の危険性を見落とすことはテロだとまで語る。

「原発とは本質的に、われわれが自ら市街地に隣接して建設した大量破壊兵器だ。自然災害や人災などが制御不能となった場合、多くの人びとが人質になる」と、同医師は批判した。(c)AFP/Magan Crane