【2月10日 AFP】住民投票で独立支持票が99%近くに達したスーダン南部が7月にも新国家となることが確定し、北部のスーダン中央政府と米国との関係も改善されようとするなか、ダルフール(Darfur)問題が置き去りにされることへの懸念が広がっている。

 米政府は、住民投票が平和裏に行われ、スーダン政府が結果を承認したことを受け、スーダンのテロ支援国家指定解除に向けた手続きに着手した。米政府高官は8日、手続き完了までに約6か月かかるとの見通しを示した。

 だが、スーダンで活動する支援団体は、ダルフール問題が国際的な議題から脱落してしまっていると警告を発している。

■ダルフール紛争、2か月前から激化

 西部ダルフール地方で2003年、アラブ系の中央政府に対抗して、非アラブ系住民が反政府組織を結成したことを発端とするダルフール紛争。国連(UN)によると、この紛争による死者は少なくとも30万人にのぼっている。

 紛争は現在も続いており、しかも政府軍と反政府軍との戦闘は前年12月から激化している。国連の推定では、この2か月間で新たに4万3000人以上が難民になった。

 国際NGOオックスファム(Oxfam)の現地スポークスマンは、「この数週間に新たな戦闘が勃発し、空爆も行われた。北ダルフール(North Darfur)州を中心に多くの住民が避難した。ダルフール地方には解決には程遠い多くの困難な問題が残っている」と危機感を口にした。

 北部を拠点とする野党の党首たちは、南部が独立すれば、ダルフール地方や反体制派の多い北部の複数地域で、分離独立運動が激しさを増すのではないかと危惧している。

 一方、ダルフール問題をめぐっては国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)が09年、戦争犯罪や人道に対する罪などでオマル・ハッサン・アハメド・バシル(Omar Hassan Ahmed al-Bashir)大統領に逮捕状を発行したが、バシル大統領はICCへの出頭を拒み続けている。

■ダルフール和平への長い道のり

 米政府高官らは、米国はダルフール問題のことを忘れていないと口をそろえる。住民投票の結果を受けたバラク・オバマ(Barack Obama)大統領は声明を出し、南部の住民を祝福した上で、ダルフール紛争の完全終結を訴えた。 

 だが、政府軍と反政府武装組織の和平交渉は前年12月以来、暗礁に乗り上げている。このときカタールで行われた和平協議で、政府側は「進展がない」ことを理由に代表団を途中で引き上げさせた。

 また、主要反政府組織「正義と平等運動(Justice and Equality MovementJEM)」は前月、交渉の席に着く用意はあるが、それは紛争の根本原因である非アラブ系住民の政治的疎外や難民などの諸問題が討議される場合に限ると表明した。

 こうしたなかスーダンのAli Karti外相は8日、スーダンと米国が「ダルフール和平の実現に向けて両国が協力し合う」旨の協定を締結したことを明らかにした。米国のスコット・グレイション(Scott Gration)スーダン担当特使も、国際NGOや国連・アフリカ連合ダルフール合同活動(UNAMID)の活動を容易にするため中央政府が努力していると賞賛した。

 しかし支援団体側は最近、ダルフール地方で治安悪化や政府軍の妨害によって活動が制限されているとして抗議している。(c)AFP/Simon Martelli

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