【1月31日 AFP】政権打倒を求めるデモが激化しているエジプトで、モハメド・エルバラダイ(Mohamed ElBaradei)前国際原子力機関(IAEA)事務局長は30日、首都カイロ(Cairo)で行われた反政府デモで演説し「新たな時代の始まり」と訴えた。

 ノーベル平和賞の受賞者でもあるエルバラダイ氏は、野党や穏健派のイスラム原理主義組織、ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)などから支持を得ており、ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領との交渉役として期待されている。

 エルバラダイ氏は、この日、カイロ中心部のタハリール広場(Tahrir square)で行われた反政府集会に参加した群衆を前に、「全てのエジプト人が自由と尊厳のもとに生きる新しいエジプトの始まりだ」と力説した。また、「われわれは正しい道の途上にある。(反政府デモを支持する人の)巨大な数こそが、われわれの力だ」と述べ、「変化が訪れるまで、もう少しの辛抱だ」と訴えた。

 これに対し、群衆側も「われわれの魂と血を国のために捧げる」と応じ、ムバラク政権打倒を叫んだ。反政府デモで、エルバラダイ氏が演説するのは、今回が初めてだ。

 30年にわたってエジプトを統治してきたムバラク大統領の退任を求める反政府デモは、エジプト全土に拡大。6日間で少なくとも125人の死者が出る事態にまで激化している。だが、ムバラク大統領は退任の意志を示していない。

■政府は治安維持態勢強化

 反政府デモが激化した直近の2日間、街頭から警察官の姿が消えていたが、ムバラク大統領は警察官らに現場に戻って治安維持あたるよう指示した。さらに、国営テレビによると30日、カイロのほかアレクサンドリア(Alexandria)やスエズ(Suez)で、夜間外出禁止令の時間が午後3時から翌朝の午前8時までに延長された。

 だが、市民らは外出禁止令を無視して夜間も抗議運動を続けている。なかには略奪行為におよぶ者も出ていることから、軍が出動し、通行車両を検問するなど警戒にあたっている。(c)AFP/Samer al-Atrush

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