【11月9日 AFP】米大統領を退いて以来、表舞台に出ることのなかったジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領が、9日発売の回顧録『Decision Points(決断のとき)』のなかで、ついに2年間の沈黙を破る。

 共和党が下院で民主党から過半数を奪回した中間選挙から1週間後というタイミングで発売となった回顧録は、ブッシュ前大統領の8年間の在任期間中、テロとの戦争、イラク進攻などの重大時にブッシュ氏が下してきた14の決断に対するブッシュ氏自身の考察が述べられており、激動のブッシュ時代の内幕をのぞくことができる内容だ。

 回顧録は、米国の外交および軍事政策の変換点となった2001年の9.11米同時多発テロで幕を開け、支持率低迷に苦慮した政権末期に起きた経済危機で幕を閉じる。

■「わたしには素早く効果的な決断を下す能力がある」

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が発売に先立って掲載した回顧録の抜粋によると、2005年8月に発生したハリケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)への対応について、ブッシュ前大統領は「もっと効果的に対処できたはずだ」と語っている。

 ハリケーン・カトリーナでの災害対応は、ブッシュ政権が行ってきた対策の
なかでも最悪のものと見なす政治アナリストも多いが、ブッシュ氏は回顧録のなかで、「もっと早い時点で物資不足を認識し介入しておくべきだった」と告白した。

 その一方で、「わたしには素早く効果的な決断を下す能力があると自負している。だが、カトリーナ災害では、その能力が働かなかった」と釈明。「わたしの決断が間違っていたのではない。決断までに時間がかかりすぎたことが問題だった」と自己弁護している。

■アルコール依存症に苦しんだ過去も

 回顧録では、アルコール依存症に苦しんだブッシュ氏が40歳で依存症を克服するまでの様子も、詳細に語られている。

 回顧録発売に先立ち、ブッシュ氏は8日夜、米テレビNBCの独占インタビュー番組に出演。大統領在任中の最悪の思い出として、人気ヒップホップ・ミュージシャン、カニエ・ウェスト(Kanye West)氏が、ハリケーン・カトリーナへでブッシュ政権が素早く対応しなかったのは、人種的偏見に基づくものだと語るのを聞いた瞬間を挙げた。

 ブッシュ氏は、「カニエ・ウェストはわたしを人種差別主義者呼ばわりしたんだ。彼は、こう言った。『彼(ブッシュ氏)のやり方は気に入らない。あいつは人種差別主義者だ』。あれは、大統領在任中で、最も気分を害された瞬間だった」と語った。(c)AFP/Patrick Baert

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