【9月30日 AFP】10月1日に英国からの独立50周年を迎えるナイジェリア。このアフリカの大国がその莫大(ばくだい)な潜在力を正しく発揮していく国になるのかは、来年1月に予定される大統領選がカギを握っている。

 今年の独立記念式典では、50周年を記念して世界最大のケーキが製作されることになっている。ただ、華やかさの陰で、貧困や汚職のまん延、宗教や民族抗争などの深刻な諸問題がうごめいている。石油資源が豊富であるのに、電気などの基本的なインフラさえ整備できていない。こうした問題が国の発展を頓挫させつつあるとの指摘も多い。

 ただし、希望の兆しが見えるとの声もある。例えば、汚職がはびこる現政権にうんざりして、変革を求め始めている有権者がいる。強い発信力を持つ文化が強みだとの声もある。例えばナイジェリアには、ミュージシャンのフェラ・クティ(Fela Anikulapo-Kuti)や作家のチヌア・アチェベ(Chinua Achebe)、ノーベル文学賞作家のウォレ・ショインカ(Wole Soyinka)など、世界に名だたる文化人がいる。

「ナイジェリアは極めて繊細な岐路に立たされている。たった1つの過ちでソマリア化する恐れがある」と、大統領選への出馬を決めている著名エコノミストのパット・ウトミ(Pat Utomi)氏は言う。「しかし、ナイジェリア国民はののしり合い、けんかしたあとで正しい方向に向き直り、歩み始めるだろう。わたしの直感がそう言っている」

■なんとか持ちこたえている国

 ナイジェリアは貧富の格差が激しい国だ。大都市ラゴス(Lagos)ではスラム街が無秩序に急拡大する一方で、そこからさほど離れていない島には豪邸が立ち並ぶ。 

 この国は世界有数の原油輸出国であるにもかかわらず、平均寿命、教育水準、国民所得を指数化した国連(UN)の「人間の豊かさ」指数で182か国中158位だ。 

 国民はキリスト教徒とイスラム教徒がほぼ半々で、250ほどの民族で構成されている。ビアフラ戦争(1967-1970)や度重なる軍事クーデターにもかかわらず、独立後半世紀にわたってどうにか国の体裁を保って来られたのは、称賛に値するとの声もある。

「イギリス人、フランス人、ドイツ人を1つの国にまとめ上げたようなものさ。国がまだ持ちこたえられているなんて、奇跡に近いよ」と、ジャズホール・レコード(Jazzhole Records)経営者のKunle Tejuoso氏は言う。

■「歴史的」な次期大統領選

 1月に予定されている大統領選は、いくつかの点で歴史的だと言うことができる。

 最有力候補は、ウマル・ムサ・ヤラドゥア(Umaru Musa Yar'Adua)大統領の死去を受けて今年5月に大統領に就任したグッドラック・ジョナサン(Goodluck Jonathan)氏だ。

 フェースブック(Facebook)上で出馬を宣言したジョナサン現大統領は、南部出身のキリスト教徒だ。だが、与党・国民民主党(People's Democratic PartyPDP)はこれまで、2期ごとに北部出身者と南部出身者を交互に候補者として指名する方針をとってきた。故ヤラドゥア前大統領は北部出身のイスラム教徒で、1期目の途中で死去したため、党の方針に従えば今回は北部出身のイスラム教徒を候補者とすべきだということになる。

 ただ、この方針を巡っては与党内でも「時代遅れ」「最良の人物が選ばれるべき」などの異論があり、意見の一致を見ていない。

 元駐ナイジェリア米大使のジョン・キャンベル(John Campbell)氏は最近、「ナイジェリアで大統領選後に暴力が吹き荒れる可能性は現実的なものだ」と記した。

 ジョナサン現大統領が当選した場合、産油地域のニジェールデルタ(Niger Delta)出身者としては初めて選挙で選ばれた大統領となる。ジョナサン氏は公正な選挙を約束しているが、これが本当なら、選挙といえば票の不正操作や脅迫がつきものだった同国において、貴重な歴史の1ページとして刻まれることになる。(c)AFP/M.J. Smith