【6月4日 AFP】世界の指導者たちが名前を覚える間もないほど目まぐるしい日本の首相の交代劇は、日本のガバナンスや国際社会に置ける存在感の足を引っ張っている。

 就任から9か月足らずで2日辞任した鳩山首相は、戦後36人目、過去4年間では4人目の日本のリーダーだった。この交代頻度は、政局の移り変わりが激しいことで有名なイタリアさえも上回る。1990年代初頭のバブル崩壊以降、2年以上在任した首相は2人だけ。20年に及ぶ経済停滞から脱出できない理由の1つは、この継続性のなさだとも言われている。

■国際社会で「あっけなく忘れ去られる」首相たち

「(ほとんどの)日本の首相は簡単に忘れられがちだし、海外ではすぐに忘れられてきた」――。米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)は社説でこのように評した。藤崎一郎(Ichiro Fujisaki)駐米大使も、もっと婉曲ながらも同様の点を指摘し、国家の顔である首相はもっと長く在任し、世界の指導者たちと連携できる人物が望ましいと報道陣にこぼした。

 ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は前年、鳩山首相の名前を口にしようとしてつかえた後、日本では「朝おはようを言う首相と、午後こんにちはと挨拶する首相が違う」と冗談を言った。

 過去の日本の首相の辞任理由は、選挙での惨敗からカネにからむ問題、女性関係のスキャンダルまでさまざまだが、専門家らは根底に横たわる理由として、日本の政治制度や選挙制度、文化的要因、首相に就任すると敵対的になるメディアなどを挙げる。

■派閥間でたらい回す首相の座、実権は別に

 日本の政治はまるで村社会だと話すのは、早稲田大学の山本武彦(Takehiko Yamamoto)教授だ。派閥によって構成され、飛び抜けて性格の強い人物なら長期政権を維持できるかもしれないが、根回しを重んじる日本の文化にあっては派閥の支持を得られなければ指導者の座から引きずり下ろされる。

 学習院大学の河合秀和(Hidekazu Kawai)名誉教授は、日本の政界では権力が必ずしも首相に絶対的に集中しているわけではないと指摘する。実権は党の有力者が握っていることが多く、この権力の二重構造が首相の地位を脆くしていると言う。前年まで半世紀以上にわたった自民党政権下では基本的に、強い派閥の有力者が数年置きに交替で首相を務めていた。

■選挙に疲弊する政治

 政治学者たちがもう1つ批判するのは、絶え間のない選挙日程だ。政治家たちはほとんど常に選挙へ向けた臨戦態勢にある。このため、政治家の最優先課題が両院選挙で勝つことになってしまっていると、川人貞史(Sadafumi Kawato)東大教授は指摘する。選挙に勝てない党首だとみなされると党内の支持を失うというプレッシャーは、日本では特に高いという。日本大学の岩井奉信(Tomoaki Iwai)教授も、「選挙が多すぎる。1年半に1度はパニック状態だ」と述べる。

■失敗に飛びつくメディア報道にも責任

 さらに川人教授は、日本のメディアの姿勢も一因だと指摘した。

 首相就任後の「蜜月期間」が比較的短く、すぐに首相を敵対視し始め、ぶら下がり取材で失言に飛びついて騒ぐ。鳩山首相の辞任をめぐっては、メディアが「鳩山政権は続投すべきか?」といった問いかけを繰り返し、世論を操作したと川人教授。どの政権でも、特に最初の半年はすべてがうまくいくことはないのが当然なのに、メディアは失敗ばかりに集中しすぎると苦言を呈した。(c)AFP/Hiroshi Hiyama