【5月6日 AFP】ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領は7日、任期4年の折り返し地点を迎える。しかしその存在はいまだ前任者のウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)現首相の影に隠れており、政治システムの解放をロシアにもたらすという期待に応えるにはほど遠いと、政治評論家らは冷めた目で見ている。

 2008年5月7日、クレムリン宮殿で行われた華やかな大統領就任式で、メドベージェフ氏は初々しい精彩を放っていた。

 大統領の連続3選を禁じる憲法に続投を阻まれたプーチン氏の後継者指名で舞台に上ったメドベージェフ氏だが、KGB(旧ソ連国家保安委員会)出身が取りざたされたプーチン氏に比べて13歳若く、語り口は柔らかで、ロシアを民主化路線に引き戻す指導者として期待は高かった。

 だが評論家らは次のように指摘する。ナンバー2である首相の位に身を引きながらも、いまだ「ロシア最高の権力者」であるのはプーチン氏で、メドベージェフ氏は同氏に挑もうとせず、実際に挑むこともできずにいる、と。

■リベラルを期待されたメドベージェフ大統領の独自色はわずか

 プーチン政権下において政府の統制強化と反対派弾圧によって強力に中央集権化されたロシアの政治機構に対し、メドベージェフ大統領は何の改革もしていないと、評論家のエフゲニー・ボルク(Yevgeny Volk)氏は批判する。「クレムリンは今も反対派を取り締まり、議会、地方、政党を支配下に置いている」

 ボルク氏によれば、メドベージェフ大統領がこの「双頭体制」から真の意味で踏み出したことが1つだけある。それはプーチン政権が2006年に施行した非政府組織(NGO)規制法を前年撤廃したことだ。

 しかし、それ以外にメドベージェフ大統領が見せた民主的なジェスチャーのほとんどはポーズでしかなく実質を伴ってこなかったと、米系シンクタンク、カーネギー国際平和財団モスクワ・センター(Carnegie Moscow Centre)のアナリスト、マリア・リップマン(Maria Lipman)氏も語る。

■外交問題でもカギを握るのはプーチン氏

 外交の舞台ではメドベージェフ大統領の姿は目立っている。世界各地を飛び回り国際サミットに出席し、最近ではバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領と米露の新たな核軍縮条約に調印した。

 ロシアの憲法上、外交における権限は大統領にある。だがここでも、メドベージェフ氏は「お飾り」にすぎず、実際に外交政策の大部分を決定しているのはプーチン氏だとの見方が多勢だ。「大統領級の会合に出席するのは、公式にはメドベージェフ氏だ。でも現実には、最重要決定は少なくとも(2人の)共同でなされるか、もしくはプーチン氏の言葉のほうが重視されることはあり得ると思う」(リップマン氏)
 
 経済政策では、イスラム系反政府勢力が活発な北コーカサス(North Caucasus)地方での投資や雇用創出を強化するなど、プーチン時代よりもリベラルな方向性をメドベージェフ大統領が打ち出しているの評価もある。

 また「メドベージェフ色」のひとつとして、石油・ガスなどの資源輸出依存型経済から脱却するため、ロシア版シリコンバレー(Silicon Valley)の創設を約束するなど技術革新を推進する姿勢も挙げられよう。

■2年後には「プーチン大統領」復活か

 それでも、印象的なメディア露出を絶やさずに「強いリーダー」のイメージを増幅し、大衆の想像力をあおっているのはプーチン氏だ。2年後の次期大統領選にプーチン氏は再び出馬する資格がある。ロシアの独立系調査機関レバダ・センター(Levada Centre)が行った3月の世論調査では、メドベージェフ大統領をロシアの真の指導者だと答えた国民はわずか14%だった。

 こうしたさまざまの状況から評論家たちは、メドベージェフ大統領の1期目が終了する2012年、プーチン首相が大統領に返り咲くという予測には確たる根拠があると考えている。(c)AFP/Alexander Osipovich