【10月29日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、「憎悪犯罪(ヘイトクライム)」を禁じた連邦法の対象を同性愛者らにも拡大する法案に署名した。オバマ大統領は、憎悪犯罪について、身体だけでなく「精神をも痛めつけるもの」だと非難し、今回の法案によって米国の人権が新たな一歩を踏み出したと称賛した。

 この法案は、人種やジェンダー、アイデンティティ、肌の色、性的指向、精神的・肉体的障害などを理由に危害を加える行為を禁止したもので、憎悪犯罪の被害者や被害者家族などが長年法案の成立を訴えてきた。

 民主党はこれまで法案成立を目指してきたが、共和党がこれを阻んでいた。保守派は法案は、宗教的信念に基づいて同性愛に反対している聖職者たちが不当に差別される恐れがあると主張していた。

 ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前政権もこの法案に反対していたが、今年前半に亡くなったエドワード・ケネディ(Edward Kennedy)上院議員が法案化を推し進めた。

 以前の憎悪犯罪禁止関連法は、人種や肌の色、宗教、国籍だけを対象としていたが、今回成立した法案には、性的指向やアイデンティティ、障害などが付け加えられた。

 オバマ大統領は、「米国では、愛する人と手をつないで道を歩くことを恐れる者はだれひとりとしているべきではない」と強調した。

 法案は、同性愛者であることやアフリカ系であることが理由で殺害された男性2人の名前にちなんで「The Matthew Shepard and James Byrd, Jr Hate Crimes Prevention Act(マシュー・シェパード、ジェームズ・バード・ジュニアヘイトクライム防止法)」と命名された。

 マシュー・シェパード(Matthew Shepard)さん(当時21)は1988年、同性愛者であることを理由に2人の男から暴行を受け死亡。ジェームズ・バード・ジュニア(James Byrd, Jr)さん(当時49)は1998年6月、テキサス(Texas)州で3人の男によってトラックの後部にくくりつけられ、引きずり回されたことで死亡した。

 エリック・ホルダー(Eric Holder)米司法長官によると、同長官が11年前に議会で同様の法案に賛成する証言を行って以来、米連邦捜査局(Federal Bureau of InvestigationFBI)には約8万件の憎悪犯罪の報告が寄せられているという。(c)AFP