【10月15日 AFP】同性愛者に対する嫌悪で知られるユーリー・ルシコフ(Yury Luzhkov)氏が市長を務めるロシアの首都モスクワ(Moscow)で14日、同性愛者を象徴するアメリカの詩人ウォルト・ホイットマン(Walt Whitman)の像の除幕式があり、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官がリボンをカットした。

 ルシコフ市長は同性愛者たちは「悪魔同然」と発言したり、同性愛者の権利擁護を訴えるゲイ・プライド・パレードを「安全と道徳性の観点から」市内で行うことを禁じるなどで有名だ。しかし、除幕式開会の辞では、男性同士の官能描写もあるホイットマンの詩を賞賛しようと、「アメリカの楽観主義的な精神に満ちあふれている」と述べたと、インタファクス(Interfax)通信は報じた。

 モスクワでゲイ・プライド関連のイベントを企画してきたゲイの権利運動家ニコライ・バイエフ(Nikolai Bayev)さんは今週初めに声明を発表し、ホイットマン像除幕式へのルシコフ市長の出席は「異様だ」ときつく批判した。

 クリントン長官は開会式ではルシコフ市長やセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)露外相と言葉を交わし、式後は像が建つモスクワ大学(Moscow State University)の学生たちを前に演説した。

 ロシア語に最初に翻訳されたホイットマン詩集『草の葉(Leaves of Grass)』から、クリントン長官は像に刻まれている一節を引用した。「あなたがたロシア人と、わたしたちアメリカ人。われわれの国はこんなにも遠く、初めはまるで似るところなく見えた--わたしたちの社会的・政治的状況の間に横たわるこんなにも大きな違い・・・それでもところどころで、広く考えれば、われわれは瓜二つなのだ」

 この像は米ワシントンD.C.にある米露文化協力基金(American-Russian Cultural Cooperation Foundation)による募金運動を通じて、米露両国の企業による寄付によって建てられた。

 ラブロフ露外相は、2000年に米ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)構内にロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキン(Alexander Pushkin)の像が建てられたことに対するモスクワ市からの返礼だと述べた。

 プーシキン像も今回のホイットマン像も、制作したのはロシア人彫刻家アレクサンドル・ブルガノフ(Alexander Burganov)氏の手による。(c)AFP