【10月13日 AFP】高い税金や遠い異国での戦争に嫌気がさしたのか、それとも私腹を肥やす金融業界を救済する米政府への怒りからか、米国の各州で連邦政府からの離脱を主張する人びとが増加している。

 州法の強化を訴える人びとと、州独立を唱える分離主義者は、1点で一致している。米政府による州政治への干渉を嫌う点だ。

 米金融街ウォールストリート(Wall Street)の人間に牛耳られた米国政府に、もはや倫理規範はないといい、両者ともバラク・オバマ(Barack Obama)氏が米大統領に当選する以前から米国に存在している。

「1865年以降、米国で連邦法の無効化が、これほど話題となったことはない」と、サウスカロライナ(South Carolina)州を拠点とするシンクタンク「Middlebury Institute」で分離独立主義について研究するカークパトリック・セール(Kirkpatrick Sale)氏はいう。

 分離派団体は、バーモント(Vermont)、ハワイ(Hawaii)、アラスカ(Alaska)、テキサス(Texas)州など少なくとも10州と米自治領プエルトリコで積極的に活動している。

 米国が1776年に独立した後も、バーモント州は1777年から91年まで、テキサス州は1836年から45年まで、独立した共和国だった経緯もある。

 その一方、分離独立派の主張は、州法の強化を求めるグループからは、あまり支持されていない。

 カリフォルニア州のシンクタンク「Tenth Amendment Center」の設立者、マイケル・ボールディン(Michael Boldin)氏も、「共通点はあるが、最終的な目的は全く異なる」と、両者の協力には懐疑的だ。

 分離独立派と比較して、州法の強化という主張には、現実味がある。例えば、2005年に米連邦議会で成立した電子IDカード法案「Real ID Act」は、25州が導入を否決している。また、連邦法に反して、13州が医療目的に限ったマリフアナの使用を認めている。

 米インディアナ(Indiana)州ノートルダム大学(University of Notre Dame)で「ナショナリズム」を専門とするリン・スピルマン(Lyn Spillman)氏も、「他国と比較して、米国の政治機構はかなり断片化されており、政策決定の場でも権力はかなり分散している」と述べ、今後、分離独立派が優勢となることは難しいとみる。

 さらに、「フリーダム(自由)」や「多様性」をアイデンティティの象徴とし、今でも独立戦争を経た独立の瞬間に胸を躍らせる米国の国民性は、包容力を持っており、またある程度までは異論を中和させることもできると、同氏はいう。

 一方、セール氏の意見は異なる。ドル安やイラク・アフタニスタンでの戦争に加え、気候変動問題による不安から、米国内のコミュニティは、エネルギーや水資源、食糧の独立を求める方向に向かい、今後の数年間で、州の分離独立に関する論争が増えるだろうと、同氏はみている。(c)AFP/Carlos Hamann