【9月12日 AFP】機種選定中のブラジルの次期戦闘機は、フランスのダッソー・アビアシオン(Dassault Aviation)のラファール(Rafale)にほぼ決まった情勢だが、競争相手は必死に巻き返しを図っている。

 ボーイング(Boeing)を推す米国政府とスウェーデンのサーブ(Saab)は、戦闘機そのものだけでなく戦闘機製造のノウハウも欲しいというブラジルに対し、重要な技術を提供する用意があると強調している。

 あるブラジル当局者が匿名でAFPに語ったところによると、フランスのニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領はブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領に、ダッソーの戦闘機について「あらゆる技術」を提供することと、競争力のある価格を約束する書簡を送ったという。

 ルラ大統領は7日、ダッソーのラファール36機の購入に向けフランスと交渉を始めると発表したが、この決定にはサルコジ大統領の書簡の影響が大きかったという。フランスのある当局者は、契約は最高70億ドル(約6300億円)に達すると述べた。

 ルラ大統領の発表を受け、米国は在ブラジル大使館のウェブサイトに、米政府がボーイングのF/A-18 スーパーホーネット(F/A-18 Super Hornet)に関する「全ての必要な技術」をブラジルに移転することを承認したとの声明を発表した。サーブも10日声明を発表し、ブラジルが同社のグリペン(Gripen)NGを選んだ場合は「主要技術」を提供すると強調した。

 しかし前述のブラジル当局者は「必要な技術」とは何か不明確である上、ダッソーが「あらゆる技術」の提供を保証している以上、情勢が変わるとは思えないと語った。

 ブラジルのネルソン・アゼベド・ジョビン(Nelson Azevedo Jobim)国防相は8日、交渉の機会はまだサーブとボーイングにも開かれていると述べた。来月大統領に3機種の詳細な報告書を提出する予定の空軍に配慮したものとみられる。一方、セルソ・アモリン(Celso Amorim)外相はこれ以上両社と交渉しないと述べており、発言が食い違っている。

 サーブと契約しているブラジルのPR会社の社員は9日、AFPに対し、政府からさまざまなメッセージが出ているが機種選定の状況について公式な連絡はなく、混乱していると語った。これに対しサーブは10日、この人物はサーブの広報担当者ではなく、その発言はサーブの見解ではないとして、「ブラジル空軍は手続きが計画通り続くことを明確にした」との公式声明を発表した。(c)AFP/Marc Burleigh